『民主主義ってなんだ?』 |
本では、民主主義とは何かということが問い続けられている。原初の民主制は、古代ギリシャに遡る。市民が丘に集い、社会のことを真剣にみんなで語り合う。ここは「市民集いの丘」という名前だが、語り合う市民は見当たらない。ちょっと、皮肉な偶然だった。
聞こえてくるのは、蝉たちの合唱。鳥の歌声。虫の羽音。ウシガエルの大きな鳴き声。かざぐるまの回転する音。
眠くなるほど平和な時間が流れている。
本に目を戻すと、この国のこと、未来のこと、世界のこと、民主主義とはなにか、を真剣に語り合う若者たちと経験を重ねた大人がいた。
この公園に流れる平和な時間と、本の中の世界は、どちらも確かに現実だけど、身の回りの世界しか見ないで生きている限り、本の中で語られているような状況を知ることはできない。
片目は堅く閉ざしたままのナチュラリストも例外ではない。原発や化石燃料に頼らないで生きていこう、自然を汚さないように、化学物質を使わない暮らしをしよう、なるべくゴミを出さないように循環させられるものを使おう、そういう暮らしは気持ちいい。気持ちいいから、平和ぼけになりがちだ。気持ちいい世界と同時に、気持ちいい世界を侵食する動きがある。
化石燃料を大量に使い続ける社会システム。
民主制の崩壊。アメリカと大資本にコントロールされた一党独裁。
それによって生まれる増税と社会保障費の削減。
沖縄の米軍基地問題をはじめとする日本人への人権侵害。
戦争ができる国づくり。
放射能のばらまき(*)。
ワクチンによる健康被害。
安全な食べ物が手に入りにくい状況。
憲法から基本的人権が消える。
声を上げないと、どんどん蝕まれる。主権者として現実を見据え、語り合わなければ、どんどん崩れていく。もう、来るところまで来てしまっている。
個人の暮らしを楽しむことは大切なことだ。しかし、努力して見ようとしなければ見えないところで、重大な危機が起こっている。自分は大丈夫というのは幻想だ。主権者である以上、面倒くさくても、現実を見て、考え、意見を語り、他の人の意見を聞いて、社会の在り方を決めることに、参加しないといけない。そうしたほうが、望む世界をつくっていける。
自然と共にある暮らしは気持ちいいけど、隠遁して、社会に対する責任を放棄してはいけない。長い目で見れば、その気持ちいい暮らしが少しずつ切り崩されていくことになるのだから。切り崩されてからよりも、早めに行動して手を打つほうが絶対に楽だ。壊れたものを直すより、壊れる前に予防するほうが簡単だ。
「市民集いの丘」に本当に市民が集って社会のことを語り合うようになったら素晴らしい。そういう場所が日本中にあふれる日が来るだろうか。
*東電福島第一原発から海や空気に今も出続けているだけでなく、日本政府は8000ベクレル/kg以下の汚染土を全国の公共事業で利用することを決定(→詳しくはコチラ:"「8,000Bq/kg以下の除染土を公共事業で再利用」方針の矛盾と危険性(解説と資料を掲載しました)"FoEジャパン 2016年5月2日)。フランスのヴィオリア社は、廃炉需要を見込み、日本に放射性物質を運びこんで処理する方針を固めていて、「日本が世界の核のゴミ捨て場になる」という危惧する声も多い。
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