20120610

カゴの外で生きる

一つの企業の中に入って、毎日決まった時間に出社し、一日中机の前に座って、決まった時間を過ぎたら帰るという日々を、送ったことがあった。満員電車を避けるために、朝6時すぎの電車に乗り、新宿南口のサザンテラスにあるスターバックスで2時間ほど勉強してから出社していた。

2カ月ともたなかった。一番大きかったのは、配属先がそれまでの経験と能力が生かせる部署ではなく、もはや変えることもできなかったことだが、活動の範囲が急に狭くなったことに物足りなさを感じていたように記憶している。

大学の頃は、同時進行でいろいろな人たちと関わり、いろいろな活動をしていた。主体的に動くことが許されていた。それが急に、活動範囲が一つの会社の中になり、与えられた仕事をただこなしていくだけになった。自分が縮小していくような恐怖を感じていた。

思い切って外に出ようと思った。会社の同期や上司、人事部の人たちに辞意を伝えると、本音でぶつかってくれた。温かいいい人たちだった。

それでも外に出た。危険から身を守ってくれるカゴを失った感覚だった。常に生活の不安がある。それでも、カゴの持ち主に生活を委ねているよりも、自分の責任でこの世界を渡っていきたいと思った。

現実は、そんなに格好よくいっているわけではなく、不安に負けそうになることもある。応援してくれる人たち、温かく見守ってくれる人たちの支えのおかげで、なんとか心が折れずにまともな生活ができている。

そんなことを考えているといつも浮かんでくるのが、Mr.Childrenの「心ある人の支えのなかで なんとか生きてる今の僕で」〈Everything (It's you)〉という一節。今は支えてもらうばかりだが、その気持ちに応えられるような仕事をして、力をつけ、いずれは、一生懸命な若者にチャンスと希望を与えられるような人間になりたいと思う。