20151208

『小さき声のカノン』―感想ふたたび

【旧暦神在月廿七日 大雪 閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)】

先日、『小さき声のカノン―選択する人々』を観て

「日本とベラルーシではなんでこんなに国の対応が違うんだろう?」
「日本でもベラルーシみたいな対応が国としてできないのはなぜなんだろう?」
「ベラルーシみたいなきちんとした対応をするために、私たちに足りないものってなんなんだろう?」

そんな疑問がいっぱい湧いてきました。

ベラルーシの人々の粘り強い努力の結果なのかもしれません。映画の中で、汚染地の子どもたちの保養に取り組んでいる方もおっしゃっていましたが、日本の政府は、子どもたちに対しても「勝手に死ねば?勝手に生きていけば?」という態度です(むごすぎる…)。それでいいのでしょうか? NOと言わないことはYESと言っているのと同じ。私は小さな声でも「NO!」と何度でも言っていこうと思いました。

福島の学校では、震災後、校庭が3.8マイクロシーベルト以下であれば、授業をしていいと言われ、学校が始まりました。この校庭の放射線量というのは、劣化ウラン弾が敷き詰められているようなものなのだそうです。

イラク戦争で大量に使われた劣化ウラン弾がちょうど3.8マイクロシーベルト。劣化ウラン弾の使用で、イラクでは子どもたちの白血病が多発しているそうです。劣化ウラン弾の放射性物質はウランだけ。東電原発事故で撒き散らされた放射性物質の種類は400種類以上と言われています。放射性物質が違えば、出ている放射線の種類も違うので、組み合わさってどんな影響を及ぼすかはわかりません。

科学的な論拠がうんちゃらかんちゃらと言う前に、そんなところであなたの子どもを勉強させたいですか? あなたはそんなところで勉強したいですか? 怖がる権利も、怖がらない権利と同等に認められてほしいです。

現場にいるお母さんたちだけが、本当に大変な思いをして、涙を流しながら、心ない非難に耐えながら、子どもたちを守りたい一心でがんばっていました。お母さんたちだけが、こんなに大変な思いをしてがんばり続けないといけないのっておかしすぎると思いました(お父さんも少しいた)。

映画を観て、東京時代、眼に見えないけど放射能があるってわかってから、空気を吸い込んでいいのかも、水を飲んでいいのかも、地面に座っていいのかもわからず、目の前の食べ物を食べて大丈夫なのかどうかもわからなくて、気をつけて暮らすことのストレスに参っていたころを思い出しました。線量計に放射線が通ったことを示すピッピという電子音。鳴る回数が多くて心臓が痛くなったものでした。

映画では、パートナーとの意見が合わずに移住に踏み切れないお母さんたちもいましたが、相方とも意見が一致していて、汚染の少ない地域へ移住できた自分。不安もなく楽しく暮らしている私なんかは、まだまだもっとがんばれるはずなのにと思いました。でも、何をしたらいいんだろう・・・。

思いつく限り、できることはしてきたつもりだけど、まだまだ足りない気がしたし、お母さんたちの苦労に比べたら微々たるものだけど、人にどう思われるのかが気になったり、孤独に潰されそうになったり、気持ち的にしんどくなってしまって、無理しないほうがいいって正当化して逃げているような気がします。映画を観てから、そんな反省が頭の中に何度も訪れます。この闘いは、自分の虚栄心、恐怖心、猜疑心、弱さとの闘いでもあるっていうことだと思います。

鎌仲監督のトークで、チェルノブイリ事故で子どもたちの医療支援をずっとしてきた松本市の菅谷市長が、「日本人は健忘症だねぇ」、その後「日本人は反復性健忘症だねぇ」とおっしゃり、最近はそれに「難治性」がついて、「日本人は難治性反復性健忘症だねぇ」と嘆かれていたと聞いて、ほんまにそうやー!と思いました。私はこれからも決して健全な記憶力を失わないと決意しました。

ダイオキシンや添加物などの化学物質が健康に与える悪影響が、内部被ばくをしている子どもの場合、5倍ほど高くなるそうです。

なので、映画に出てくるベラルーシの保養施設や、北海道で保養の受け入れをしている「チェルノブイリのかけはし」では、保養中の食事は、なるべく無添加のものになっていました。チェルノブイリのかけはしでは、酵素玄米ごはんなどのような毒素を排出する食べ物をつくって、体内の放射性物質の排出を促していました。

食養に詳しい人たちやヒーリングの技術がある人たちと一緒に、療養的なアプローチの保養活動がやれたらいいなぁと思いました。一人ではなかなか、金銭的にも時間的にも肉体的にも能力的にも、いろいろ難しさがあるけど、子どもたちを放射能の影響から守るためにできることを増やしていきたいなぁと思いました。

『小さき声のカノン―選択する人々』
http://kamanaka.com/canon/


上映情報はこちらからどうぞ。
http://kamanaka.com/theater/

おすすめ書籍:

チェルノブイリから学んだお母さんのための放射能対策BOOK

放射能下の日本で暮らすには?:食の安全対策から、がれき処理問題まで

)関連記事:
20130413 脱原発を願うようになった経緯