昨日のつづきで、日本社会のセーフティネットがどんな状態かを書きたいと思います。
当事者の生の声を聞いてみると、大企業で務めていた人も、公共機関の人もいて、正社員で困ったことになった人もいたし、だれだって一寸先は闇、という雇用のあり方に、今の日本はなっています。残念ながら。
せめてセーフティネットだけでも機能していればまだよいのですが、セーフティネットがもともと脆弱で、安倍政権になってからは、派遣法が改悪されたり、さらにネットが1本切られ、2本切られ…と、ますます穴だらけの状態。
憲法でも定められている「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障する義務を国が果たしていないため、消費者金融(いわゆるサラ金)、ゼロゼロ物件、駅手配といった、貧困ビジネスが蔓延っているという現状がよくわかりました。
これは、第1巻「反貧困の学校―貧困をどう伝えるか、どう学ぶか―」のほうに出てきた、「カフカの階段」の説明図です。
カフカの階段の説明図(生田さんのウェブサイトより)
拡大用のPDF
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転がり落ちるのは階段になっているのに、上るのは一足飛びしかない、というのが非常によくわかります。そして、運良く、一足飛びにてっぺんに戻れたとしても、てっぺんはどうなっているか?
椅子取りゲームです。
椅子取りゲームの説明図 野宿になるのは自業自得?より(同上) |
がんばって椅子に座れば、必ずこぼれ落ちる人がいる。言い換えると、必ず、野宿になる人が出てしまう。個人の努力の問題ではない。自己責任ではない。
椅子自体を増やさないと、根本的な解決にはならない、ということです。
みんなこぞって、自己責任、自己責任、と言いますが、それは完全な洗脳です。私もそうでした。「自分は有能だ」といううぬぼれもあったと思います。
当事者の声をちゃんと聞いたことがありますか? 私はビッグイシューで当事者の声を読んではっとさせられました。→ビッグイシューの販売人の声
昔、派遣村の様子がテレビで映しだされたとき、「見てみなさい。あの、ホームレスの姿。情けない後ろ姿してるでしょ? あんなふうになったらいけないよ」と、身近な高齢の女性から言われて、「ほんまやな!あんなんになるんは自業自得や!」と答えていました。事実を忠実に見ていなかった。
テレビや新聞などで刷り込まれていた、ホームレスになるのは無能な人、努力が足りないからであって切られても自業自得というイメージしかありませんでした。あの頃の自分に、「おい、これでも読んでみろ」と言いたい。
企業のほうも苦しいからこんなふうになっているんじゃないの?とも思いましたが、調べてみると、大企業の場合、内部留保も収益も上がっています。役員報酬もすごい。このランキングを見て、こんな金額を見たことがないので、最初、単位の桁を見間違えました。
「円」じゃなくて、「万円」です…。本に出てきた過労死した人の会社も入っているし、派遣労働者で苦しい思いをしている人の会社も入っています。
こんなにお金があるのに、どうして労働者にきちんとお金を払わないのだろう、そんなたくさんのお金を独り占めしてなにに使うのだろう、と思ってしまいます。自分の短期的な、金銭的な得しか考えていない、人でなしの経営者もいることでしょう。だから、法律の縛りが必要なのです。法律で労働者の権利を守らないといけない。
これは第2巻(反貧困の学校2―いま、はたらくが危ない―)に出てきましたが、フランスでは冬の間、どんなに家賃を滞納しても大家さんは入居者を追い出してはいけないという法律があるそうです。理由は凍死してしまうから。
日本の企業は、野宿者になるとわかっていながら、凍死、餓死するかもしれないとわかっていながら、従業員をほっぽり出すというのは「どういうことなんだ!?」と派遣村の報道を見たフランス人の人が言っていたそうです。(p. 41-42より)
フランスでは、入居者を凍死させても平気な大家さんもいるかもしれないから、法律で、それはやめましょうね、と定められている。日本でも、そういう、弱い立場の人、たまたま、困窮することになってしまった人を守る法律が必要だと思います。
そのためにも、この本で描かれているように、今まで、声を上げられなかった人たちが、垣根を越えて、声を上げ始めたというのは、すごく意義のあることだと感じました。
当事者の声を反映した仕組みづくり、法整備が進むように、投票のときに、候補者の政策や実績を吟味したり、私もできることをしていきたいと思いました。
【反貧困の学校 1&2】
反貧困の学校 |
反貧困の学校2 |
)関連記事:
・20151221 「反貧困の学校」と「反貧困の学校2」を読んで〈その1〉
・20151225 「反貧困の学校」と「反貧困の学校2」を読んで〈その3〉―ジェンダーと労働問題
・20140129 弱者のためにとことんやる
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http://www.bigissue-charibon.jp/