先週、ずっと見たかった映画、『小さき声のカノン―選択する人々』をようやく見ることができました。
子どもたちを放射能への被曝から守りたいと願い、できることをなんでもやろうと努力しているお母さんたち(一人だけお父さんも出てきた)の姿がありのままに捉えられていました。
移住を選択した人も、地縁や血縁、仕事や学校など、さまざまな事情で住み続けることを選ばざるを得なかった人もいます。みんな、「命を大切にしたい」という一心で、初めてデモで声を上げたり、理解のない夫を説得したり、汚染の少ない地域へ避難したり、子どもたちを保養に出したり、食べ物や空間線量を測りまくったり、除染をしたりと、一所懸命にできることをしていました。
*予告編はこちら↓
「最初は泣き虫でなんにもできなかった私たちが」と事故当時のことを振り返るお母さんたち。それでも頑張り続けないといけない現実。折れそうになることもあるだろうなぁと涙が出てきました。どうにかできないのかなぁ。
福島と関東圏のお母さんたちと同じように、「子どもたちを被ばくから守りたい」と奮闘する、チェルノブイリ事故で放射能汚染を受けたベラルーシの人々の取り組みも描かれていました。ベラルーシで行われている国の対応は、日本とは大違いでした。
まず、汚染状況については、ベラルーシでは政府が土壌汚染地図を作り、土壌汚染の状況に応じて、移住を義務付けています。放射性物質そのものを測ります。この土壌汚染地図は5年ごとに更新されます。
一方、日本では空間線量を基に被ばく安全基準が決められていて、事故前の1ミリシーベルト/年から、事故後には20ミリシーベルト/年に大幅に引き上げられています。空間線量なので、放射性物質そのものではなく、放射性物質が出す放射線の量をもとにしています。
小さき声のカノンHPの「キーワード」より |
食べ物については、ベラルーシでは、国家機関ですべての食品を計測し、規定値(食品によって異なる。日本よりも遥かに厳しい基準)を下回ることを示す証明書つきで販売していて、市場にも放射能測定器が置かれていて、畑の作物や森で採れたキノコや木の実などを、だれでも無料で検査をすることができます(こちらもご参考に→通販生活サイト「今週の原発:汚染地に暮らさなければならないのなら、きれいな食品を食べ、定期的な健康診断を徹底すること。それが最も大切です」)。
一方、日本では、地産地消が推奨され、汚染地に住んでいる子どもたちが給食で汚染の可能性が高い食品を食べさせられています(参考記事)。政府とマスコミによる「食べて応援」キャンペーンで、放射能汚染の恐れがあるのに、測定されていない食べ物を食べて内部被ばくすることが推奨されています(参考記事)。
汚染のない地域に一定期間行くことで、体内に入った放射性物質を排出することができることが臨床的な調査でわかっていて、汚染地に住む子どもたちは、汚染のない地域で過ごすことで病気の発症を遅らせたり、予防したりすることができると考えられています。
これは保養(転地保養)と呼ばれていますが、ベラルーシでは海外保養などを国の負担で実施しています。日本では、NPOや心ある市民によるボランティア(実費は自己負担)です。
映画に出てきたベラルーシの保養は、症状にあわせて専門家が治療プログラムを作成し、サウナや鼻を温める療法、マッサージなど代替医療でのまさに療養という感じでしたが、日本の保養は、治療ではなく外遊びや観光などの遠足のようなものが多いということでした。
上映後、鎌仲監督とお話しできて、パンフレットにサインをいただきました。書いていただいた言葉は「心をつなげて」。できることを地道にやっていくなかで、「命を大切にしたい」という同じ想いを持っている人たちと心をつなげて、大きな力になっていけたらいいなと思いました。
*感想の続き→20151208 『小さき声のカノン』―感想ふたたび
●小さき声のカノン―選択する人々
http://kamanaka.com/canon/
*お近くの上映会情報はコチラでご覧になれます。
http://kamanaka.com/theater/
お近くで上映会がありましたらぜひ観てみてください!
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