【旧暦霜月十八日 冬至 麋角解(さわしかのつのおつる)】
翻訳をしていてworking motherという表現が出てきました。日本語でも「ワーキングマザー」「働くママ」と翻訳されています。
改めて、すごーく変な言葉だと思いました。
家族の健康のために食事をつくったり、きれいにおうちを整えたり、子どもの成長を支えたり、母はマザーであるだけですごく働いていると思います。それなのに、生活に必要な営みをしている母親のことを「働いていないママ」「ノンワーキングマザー」とでも言わんばかりでとても失礼だと思います。
文脈的にも会社勤めをしている女性限定だったので、私は「会社勤めをしている母親」「会社で働く母親」と訳しました。たぶん、「“ワーキングマザー”って言うのよ、知らないの?」って思うチェッカーさんもいるんでしょうけれど、こういう深い思考の伴わない訳語が、「女性は基本的には家事をするもの」「家事は働いているとは言えない瑣末な雑事」という暗示を広げます。
文化を創造する翻訳者の端くれとして、訳語が社会に与える影響には常に敏感でありたいと思っています。
「ワーキングマザー」という言葉は、大半の文脈において、フリーランスで働いている女性すら含まれていません。
「働く」の定義が、「企業に勤めて金を取ってくること」っていう狭い意味でしか使われていないということの表れであって、こういう思考だから、フリーランスで働く女性や女性の起業家が働きにくい状況に置かれているし、変わっていかない。
思考の切り替えが重要だと思います。
またworking motherという言葉に出会ったら、こりずに「会社で働く母親」と訳します。
working father=「ワーキングファザー」「働くパパ」という言葉が使われないのと同じように、working motherという言葉自体、見ることがなくなる世の中を願っています。
ついでに、「イクメン」って言葉もイラッと来ます。「はあ!?父親も親とちゃうんかい!?」って言いたくなる。すでに長くなりましたので、これについてはまた後日改めて・・・(→追伸:書きました「20160910 「イクメン」「ペアメン」という言葉に感じる違和感」)。