【旧暦睦月十一日 立春 末候 魚上氷(うおこおりにのぼる)】
地方へ移住する前から、会社など決められた場所に行かずに、好きな場所で仕事をする、というスタイルをとってきました。
移住前は、それだけだとお金が足りなかったので、パートタイムで会社にも通っていました。なので、東京時代は、半分はオンサイトワーク、半分はリモートワークで、両方のおもしろさも、難しさも味わいました。
リモートワークとオンサイトワークを一個人的な経験から比べてみたいと思います。
リモートワークのいいところはというと・・・
・場所にとらわれないで仕事ができる
パートタイムで行っていた会社は、職場の人たちがいい人たちばかりで、いつも人間ドラマにあふれていて学校よりも楽しかったのですが、ごみごみして空気が汚いところに行かないと働けないというのが苦しかったです。
窓も開けられないし、開けるとどぶの臭いにおいがするし・・・
昼間は自然の光の下で仕事がしたくても、窓から光がとどかないので一日中蛍光灯の下。無線LANの利用が始まって、電磁波もきつくなりました。
今は健康的な環境で、昼間は日の光でお仕事。東京に出て6年目に発症した花粉症も、移住して3年目にして治ったみたいです。環境が仕事の出来に与える影響はとても大きいと思うので、以前よりもいい環境でいい仕事ができていると感じています。
・通勤というロスタイムがない
door to doorで2時間かけて通勤していました。帰りも合わせたら4時間。
住むところは緑の多いところがよかったので、長時間通勤のほうを選びましたが、通勤時間を短くしようと思ったら、住むところまでゴミゴミした空気の汚いところになってしまいます。
通勤時間には、本を読んだり、勉強をしたり、翻訳用の原稿を予め読んでおいたり、携帯でメールを返しまくったり、なるべくロスタイムにならないように、有意義に使えるようにしてはいましたが、今思えば、なんだか虚しい努力でした。
今は朝寒すぎるので、暖かくなるまで布団にくるまって、あったかくなってからゆっくりご飯を食べて、さて、仕事を始めるか、と、のんびりしてても始業時間10時です(なんて幸せなんだ!)。
ストーブにスープをかけて、煮えるまでの2時間で一仕事終えたり、仕事の返事待ちの中途半端な時間に、ちょっと繕い物をしたり、ということも可能。デスクワークも連続だと厳しいですが、ほかのことで身体を動かしながらだと、気分転換にもなります。
頭が煮詰まってきたら、ちょっと違うことをしてみると、インスピレーションが湧いて
ふとした瞬間に解決策が見つかったり。
時間も場所も、やることさえきちっとやっていれば自由。リモートワークはこれが一番いいところ。
オンサイトワークだと、仕事がいくら早く終わっても、終業時間までは絶対その場にいないといけない。電話番もしていたので、仕方がないといえば仕方ないのですが。それにしても、寒い中がんばって早起きして飛び乗る満員の通勤電車はしんどかった…。もう一度やれと言われたら、絶対にもう無理だと思います…。
毎朝、同じ時間に同じような方向に大勢の人が大移動する。会社の所在地がもう少し分散しているとよいのですが、なんであんな狭いところにひしめき合っているのでしょう…。
・いろんな人たちと関われる
会社に抱えておけるフルタイムの社員の数は、無限にとはいかないので、ある程度限られてきます。
フリーだと、プロジェクトごとにいろんな人たちと関われるので、無限におもしろい人たちとの出会いが広がりました。直接会ったことはないですが、家で仕事をしながら、世界中に知り合いができました。
アメリカにいる翻訳者さんは、日本文化が大好きで、竹細工職人の修行までしていたそうで、手仕事好きの私は竹の話題でだいぶ盛り上がりました。
いろんなところに住んでいる人たちと関わっているうちに、視野も広くなったし、いろんな見方、考え方があるんだなーと思えるようになって、自分が縛られていた固定観念にも気がついて、楽に生きられるようになってきました。
仕事中にお酒を飲むことは、昔だったら、「不謹慎」と思っていたのですが(外国の方が多い職場にいたときに、酒飲み仕事をしている人がいるという噂があった)、ランチにワインやビールを飲む国があるくらいだし、ちょっと緊張がほぐれて、むしろいい仕事ができるくらいの量だったら、いいんじゃないの?と思えるようになりました。
世界規模の問題も、もっと身近に感じられるようにもなりました。
・気持ちのいい関係の人たちだけと仕事ができる
いじわるする人や、合わない人と同じチームになったらどうしよう、という心配がありません。
オンサイトでもそういう経験は幸いありませんでしたが、大好きな人が他の部署に異動になって、もう二度と一緒に仕事ができなくなったときは悲しかったです。
リモートワークだったら、もし、あまり立派な心がけでない人が現れたら、一度は一緒に仕事をしても、次からは「ありがとう、さようなら~」をすればよいだけなので、気が楽です。
今は本当に恵まれています。基本的にはメールだけでのやりとりですが、仕事の話だけでなくて、季節の話題や近況を語り合えたりも楽しいですし、私が他の仕事との兼ね合いで
無理しすぎていないか心配してくれたり、スケジュールに無理がないようにうまく組んでくださったりと、いつも気にかけてくれる方がほとんどです。
私のことを疎ましかった人も離れて行きました。私はどうも、痛いところをついてしまうらしいのです。合わなければ、お互いに心地のよい距離でいるのが一番ですね。
逆に、リモートワークで難しさを感じるのは、コミュニケーション。
表情や空気が読めないので、顔を見てだったら言いやすいけど、メールでだと言えない・・・ということも多々あること。行き違いやスレ違いがあったときに訂正しにくい、というか、気づくことすら遅くなるので、気づいたときにはもう遅い、ということもありました。
つい深読みしすぎてしまったりしてモヤモヤしたり。結構当たることが多いので、まあ、無駄な深読みでもないのですが。
オンサイトでの仕事のときは、自分がやらない仕事のことも観察できて、電話応対とかでも「あーこういう言い回しをすればいいんだー」などなど、勉強になることがいっぱいありました。
日々、人間ドラマが繰り広げられているのもよかった。私がミスしたときも、好きでミスをする人はいない、みたいな感じで、みんなでかばってくれて、解決してくれたりということもありました。本当になんていい職場だったんだろう。
逆に、リモートワークでは、プロジェクトでミスがあったとき、謝ったほうが負けみたいな空気になることもあって、原因がわかりにくくなったり、100%悪いわけでないのに自分だけが謝るはめになって「なんじゃそりゃ~」みたいなことになったり、ということもありました。
まあ、オンサイトでもそういうことはあるわけで、結局はどんな人が関わっているかなのでしょうけれども。
リモートワークでも、間違いの指摘は、本当に人間性が優れている人は、メールでもものすごく配慮のある指摘の仕方をしてくれます。ダメ出しだけでなく、ちゃんとできていたところもほめてくれて、そのバランス感覚が素晴らしすぎる。こういう方と仕事ができると、本当に幸せです。
自宅が仕事場だと、仕事をする空間も、くつろぎの空間も同じになってしまうので、ツライ仕事のときは、仕事が終わってもくつろぎモードになれず、しんどいこともありますが、幸い、滅多にそういうこともなく、楽しいことばっかり仕事になっているので、不都合はあまり感じません。
オンオフの切り替えがどうの、とかよく言われますが、私は職業ロボットではなく、常に人間でいたいので、ずっとオンでいいんじゃないの、って感じです。
ワークもライフも一緒。ワークもライフの一部です。いつでもLife is beautifulを目指していきます。
今は完全にリモートワークオンリーになりました。ちょっとさみしくもあり、オンサイトもたまに恋しくなりますが、どっちかを選べ!と究極の選択を迫られたら、やっぱりリモートワークを選ぶだろうなぁ。一度この自由を手にしてしまうと、もう箱の中には戻れそうにもありません。