数年前、東京・青山のオーガニックレストランに入ったら、ランチョンマットとして敷かれていた紙に、
「有機JASだけが本当のオーガニックなのです」
とでかでかと書かれていました。そんなことはありません。全くの誤解です。
かなり有名なお店でした。無農薬、無化学肥料の農業に取り組む農家の人の気持ちをもっと考えてほしいと思いました。農業だけでもたいへんな労力がかかるというのに、認証を取るのに、膨大な書類仕事が発生し、多額の費用もかかるので、認証を取る余裕のない農家さんもいます。
こんな誤解を広められると困るので、そのランチョンマットの紙に意見を書いて、ささやかな抗議をしてきました。その後、訂正されたのだろうか、とふと思い出すことがあります。
オーガニックを単なるファッションやブランドみたいにお金を支払わせる道具にしているお店があるのは悲しいことです。生産者をないがしろにして、先進的なすごいことをしていると思い上がっている勘違い自然食品店には腹が立ちます。まじめな生産者さんを応援するためにも消費者は賢くならないとなぁと思います。
今思えば、ランチョンマットに紙を使ってる時点で、森林資源の無駄遣い。本当にオーガニックな精神のお店なら、なるべく使い捨てを減らす努力をしているはず。友人のお店では、漆塗りの箸を入れる箸袋さえ、終わったカレンダーやおしゃれな古雑誌で手作りしていました。
脱線しましたが、「有機JASだけが本当のオーガニック」の何が誤りか?
について具体的に書きたいと思います。
この宣伝文句が誤りなのは、
オーガニック認証を取得しない農家さんがいる
からです。
なぜ取得しないかと言うと、負担が大きすぎるから。
まず、高額な認証費用(*)は農家さんの負担になります。1枚1枚の畑で検査料が発生します。検査料は毎年かかり、有機JASのラベル代も農家さんの負担です。検査員の交通費と宿泊費も農家さんの負担です。
*ご参考→NPO有機農業認証協会「申請等の費用」
お金だけでなく、作業的にもすさまじい負担があります。
農薬や化学肥料などの使用が「ない」ことを証明する―これがいかにめんどくさいことか。
畑を人間の身体にたとえて考えてみます。
たとえば、自分が3年間、お酒を一滴も飲んでいないことを証明しなければならなくなったとしたらどうでしょうか。
アルコールは時間が経てば、体内からなくなります。検査を受けるときに、血液をとろうが、呼気をはかろうが、出ない。でも、それは3年間飲んでいないことの証明にはなりません。
どうしたらいいのでしょうか?
24時間監視カメラで監視される?
毎日呼気や血液を検査してデータを残す?
残留農薬検査というのがありますが、農薬もある程度時間が経てば検出されなくなるものもあります。
先ほどの例のアルコールだけなら1種類ですが、有機JASの場合は、その検査対象の物質が山のようにあります。これらが「ない」ことを証明するために、毎年、膨大な書類作成が必要になります。
農作業だけでも大変なのに、こんなに作業の負担が増えるなんて、農家さんに申し訳ない気持ちになります。
西尾道徳さんのウェブサイトに掲載されていた「No.187 有機JAS以外の有機農業の実態調査結果」という記事の「H.有機JAS以外の有機農業者の有機JASに対する姿勢」という調査でも、有機JAS認証を取得しない理由のうち、
「取得にかかる費用が高い」
「申請書類が煩雑すぎる」
が上位を占めています。
前述のオーガニックレストランは、この辺のことを全く勉強していないから「有機JASだけが本当のオーガニック」なんて、厚顔無恥に言えるのだと思います。
大地を守る会さんのウェブサイトにもとても適切に説明されています。
「有機JASだけが本物のオーガニック」だなんて、国からのお墨付なら信じるという消費者は、国が認可した農薬だから、化学肥料だから、化学物質だから安心、と思っている消費者と、思考回路にさほど変わりがありません。
有機JAS認証には、強い毒性のあるボルドー液など、使用が認められている農薬が多数あって、実際には、「有機無農薬」か「有機減農薬」かになりますが、有機JASだけではそのどちらなのかがわからない表示になります。
以下に一覧が掲載されています。
ちなみに、私が優先して買わせてもらう農産物は、
・自家採種or固定種or在来種の品種
・無施肥
・堆肥を使用する場合は植物性堆肥のみ
・不耕起栽培
・石油由来の資材を使用しない
・農薬と化学肥料を使っていない
・放射能が入っていない
動物性堆肥を使用する場合は、
・3年以上寝かせた完熟堆肥(*)
・自家飼育など、エサが遺伝子組換えではなく、抗生剤など薬物の投与がない動物の糞
なら、優先して買わせてもらいます。
*理由は、動物性の肥料は、未熟なまま施すと、硝酸態窒素濃度が高くなりやすくなります。硝酸態窒素は過剰になると身体にも環境にも良くない影響があります。
(詳しくはコチラの大根が並んだ写真の下あたりをご覧ください)
有機JAS認証では測れないものばかりです。農家さんや販売店さんとの信頼関係があればこそ、これらを買うことができます。お墨付きに頼ってばかりだと、自分の目が曇ります。自分の目を養って、まじめにいいものを作ってくださっている農家さんたちから買わせてもらって支えていくことが、一番大切なことだと思います。
【関連書籍】
前述のオーガニックレストランは、この辺のことを全く勉強していないから「有機JASだけが本当のオーガニック」なんて、厚顔無恥に言えるのだと思います。
大地を守る会さんのウェブサイトにもとても適切に説明されています。
フードレポート:有機ってなに? 有機野菜は、なぜ広がらない?(2015/12/01)国の認証よりも、お店独自の表示形式のほうが、選ぶ側としてもわかりやすいし、農家さんへの負担も少ないと思いました。
「有機JASだけが本物のオーガニック」だなんて、国からのお墨付なら信じるという消費者は、国が認可した農薬だから、化学肥料だから、化学物質だから安心、と思っている消費者と、思考回路にさほど変わりがありません。
有機JAS認証には、強い毒性のあるボルドー液など、使用が認められている農薬が多数あって、実際には、「有機無農薬」か「有機減農薬」かになりますが、有機JASだけではそのどちらなのかがわからない表示になります。
以下に一覧が掲載されています。
「有機」表示のできる農薬国の認証だけに頼って判断するのではなくて、自分なりの基準を持つことが一番大切なことだと思います。
ちなみに、私が優先して買わせてもらう農産物は、
・自家採種or固定種or在来種の品種
・無施肥
・堆肥を使用する場合は植物性堆肥のみ
・不耕起栽培
・石油由来の資材を使用しない
・農薬と化学肥料を使っていない
・放射能が入っていない
動物性堆肥を使用する場合は、
・3年以上寝かせた完熟堆肥(*)
・自家飼育など、エサが遺伝子組換えではなく、抗生剤など薬物の投与がない動物の糞
なら、優先して買わせてもらいます。
*理由は、動物性の肥料は、未熟なまま施すと、硝酸態窒素濃度が高くなりやすくなります。硝酸態窒素は過剰になると身体にも環境にも良くない影響があります。
(詳しくはコチラの大根が並んだ写真の下あたりをご覧ください)
有機JAS認証では測れないものばかりです。農家さんや販売店さんとの信頼関係があればこそ、これらを買うことができます。お墨付きに頼ってばかりだと、自分の目が曇ります。自分の目を養って、まじめにいいものを作ってくださっている農家さんたちから買わせてもらって支えていくことが、一番大切なことだと思います。
【関連書籍】
オーガニックラベルの裏側: 21世紀食品産業の真実 |
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