ろくでなし子さんのことを初めて知ったのは、翻訳を担当させてもらっている時事ものの媒体ででした。
3Dプリンタで出力可能な自分の女性器のデータを配布して、わいせつ物を不特定多数に配布した疑いで逮捕されたというニュースを訳すことになりました。(実際には、クラウドファンディングでプロジェクトの趣旨を理解して出資した人たちだけ配ったので、不特定多数ではない)
これは、英語学習者向けの週刊紙で、「子どもも読むものなのに、こんな生々しい記事をのせなくても・・・」と思いました。
そのニュースだけを見たら、「なんでそんなことすんの!?」と、正直、ものすごーく引いてしまい、気持ち悪いことをする人もいるものだと思いました。しかし、これが全くの誤解だったことが、しばらくして、偶然わかることになりました。
本当に、先入観や、流布されている情報のイメージで決めつけてしまうのは、ものすごく怖い。本人の言葉をきちんと聞かないと、本当のことはわからないと、ろくでなし子さんのおかげで、大事なことを学ばせてもらいました。
都会の書店にふらりと寄ったときのことです。ろくでなし子さんの本が目に飛び込んできました。
ワイセツって何ですか?(ろくでなし子・著/金曜日・刊) |
「おわっ!あのひとやー!」とびびりつつ、なんでそんなことをしたのかが気になったので、読んでみることに。
漫画家さんなので、漫画でルポが描かれていて、笑いあり、怒りありで、夢中になってあっという間に読了しました。
なぜ、女性の真ん中、みんなが出てきたところだけは、タブー扱いになっているのか?という疑問に、アートで立ち向かっているということがわかりました。
作品はどれも笑えるものばかりで、これのどこがわいせつなの?と思いました。
女性器そのものは、臓器であり、肉体の一部でしかなく、それ自体がいやらしいものではない。
それなのに、男性が自分の性欲をかきたてたり、性欲を満たす道具にしている、だから隠されていてほしいし、隠しておくべきものである、という文脈があって初めて、いやらしいわいせつ物になっている。
男性器のことを、女性は性欲をかきたてる道具にはしないので、男性器はタブーになっていなくて、くれよんしんちゃんが「ぞうさん」をしても別に問題にならない。(露出狂は人に迷惑がかかるので犯罪ですが・・・)
女性器は「布団の中や暗がりでそっと見るのがそそられる」という、気持ちわるい男性の発言をきっかけに、「そんならじゃらじゃら光らせてやれ!」と女性器をモチーフにしたキラキラをシャンデリアにした作品を作ったそうです。
ろくでなし子さんの作品は、男性の性的な満足のための道具にされてしまっている女性の身体を笑い飛ばせてしまう作品に変えてしまうことで、もっと中庸なものとして解放する狙いがあったのでした。
たしかに、ダビデ像など、男性器は堂々とそこらへんに出ているのに、ビーナスは髪の毛で隠しているのも不思議です。
この本を読んで、ろくでなし子さんは、そうした男性優位の歪んだ女性観に、ユーモアとアートで立ち向かっていたんだと初めてわかりました。
ろくでなし子さんの作品を通じて、自分の真ん中がもっと好きになれた、まっすぐに向き合うきっかけになった、と喜んでいる女性もいます。
ろくでなし子さんの活動のことを、誤解していて申し訳なかったなぁ、と思いました。
*7月24日の外国特派員協会における記者会見でも、ろくでなし子さんの活動の目的や経緯が詳しく述べられています。本がすぐ読めない方は、まずはこちらからお読みになられてはと思います
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警察の扱いもものすごくひどいことがわかって、人権意識の向上など、日本はまだまだ遅れていると思いました。逮捕されて留置場に勾留された人は、まだ罪人と決まったわけでもないのに、完全に罪人扱いで、名前で呼んでもらえず、「お前は今日からニーゼロ(20)」と、番号で呼ばれたり、トイレも人前でしないといけない状況があったり、食事やお風呂もとても人間らしい扱いとは思えない状態でした。無罪の人もこんな扱いを受けるなんて、ひどすぎると思いました。
ろくでなし子さんの第一審の求刑のニュースがありましたが、警察側の言い分しか報道されていなくて、警察側が「罰金80万円を求刑」としか報道されておらず、もう求刑通りに決まったかのように誤解している人が多いようです。そういうふうに既成事実化したいという狙いもあるのかもしれませんが。
弁護側がどんなふうに反論して、結審はいつなのかが気になったので、ツイッターでろくでなし子さんを探してみたら、次のようにコメントされていました。
これは検察側の求刑で、まだ決まった訳ではありません。判決は5月9日ですが、警察という国家権力がそう仕向けたいように感じます https://t.co/q7pFdRcW8n— ろくでなし子@地裁判決日5.9 (@6d745) 2016, 2月 2
(´-`).。oO(ほとんどの人は、報道のされ方で事件を判断する。わたしも前は深く考えもしなかった。警察や検察寄りの意見ばかり報道されるとわかってからは、何か事件があっても、ほんとにこの人は悪い人なのかどうかをまず疑うようになった。— ろくでなし子@地裁判決日5.9 (@6d745) 2016, 2月 2
決めつけって怖いヨ(´・_・`)
(´-`).。oO(まんこ見せたいだけの女というメディアのイメージ操作が怖い。名前もろくでなし子だから仕方ないけど、なぜそんな事をするまでにいたったか、本当に伝えたいコンセプトとか、取材が来たらまじめに答えてるんだから、もっと丁寧に報道してほしい。— ろくでなし子@地裁判決日5.9 (@6d745) 2016, 2月 2
(´-`).。oO(検察の求刑を判決だと思ってる人が多すぎンゴなので、アカウント名に入れといた(´・_・`)— ろくでなし子@地裁判決日5.9 (@6d745) 2016, 2月 1
メディアは検察の極端な言い分しか報道してくれないところばかりで残念。唯一詳しく書いてくれてるのは弁護士ドットコムhttps://t.co/GmUIeQME7Z
わたしの作品や3dデータは「それ自体が性的興奮を催すものとは言えない」からワイセツじゃないと主張してるけど、例えば大島渚監督の愛のコリーダみたいに「性的興奮を催す芸術」もある。監督の「ワイセツ何が悪い!」にも同意だ。問題は、個人の欲望や表現を国家がコントロールしようとする怖さ— ろくでなし子@地裁判決日5.9 (@6d745) 2016, 2月 2
いやー、本人の言葉を聞くって本当に大切ですね。
今の時代、こうやって本人の言葉を探せば見つけられるというのは、ありがたいことです。