20190625

私が甜菜糖(てんさい糖)を選ばない理由

身体によさそうなレシピの本で、甘味づけにてんさい糖が使われているのをたびたび見かける。そのためか、私もかつてはそうだったが、てんさい糖が砂糖のなかでは最も身体によいと思っている人も多い。

今は砂糖そのものをやめているが、砂糖を食べる人の参考になるかもしれないと思うので、私がてんさい糖は積極的には選ばない理由をいくつか挙げてみたい。

その前に、まず、なぜ甜菜糖が身体によいとされるのか。

マクロビオティック(正食・食養とも)では、糖類はすべて陰性になるが、てんさい(甜菜もしくは砂糖大根とも)は比較的陰性の強くない糖類だとされている。暑い地方で育つものは身体を冷やす作用があって陰性に、寒い地方で育つものは身体を温める作用があって陽性に傾き、地上に伸びるほど陰性、地下に伸びるほど陽性とされる。この理論に基づくと、てんさいは寒い地方で栽培され、根菜なので身体を冷やす作用が小さいという。さとうきびは暑い地方で栽培されるので身体を冷やす作用が強いということになる。

それだけを聞くと、陰性に傾きやすい現代の食生活では、てんさい糖が賢い選択だと思っていた。暑い地方で作られるサトウキビからできるきび砂糖は陰性で、健康のためにはてんさい糖を使うのが正しいと主張するマクロビ派の人もいる。

しかし、マクロビの陰陽だけではなく、ほかのことも考え合わせてみると、いくつか不安な点が出てくる。


その1:除草剤を多用する(使っていないかどうかがわからない)

てんさい糖の原料の甜菜(砂糖大根)を収穫するときには、除草剤をばーっとまいて地上部の葉っぱや草を全部枯らすこともあるそうだ。収穫を楽にするためだ。根っこだけが必要なので、それ以外は全部いらないから枯らしてしまう。除草剤が使われていないかどうかは書かれていないので判断のしようがない。

ちなみに、収穫時以外にも、一般的な栽培方法では、除草剤の使用が推奨されているよう。「甜菜 除草剤」でgoogle検索すると、甜菜の産地・北海道の農業団体などが推奨栽培法を書いているウェブサイトがいくつか見つかった。移植後25日後に1回目の散布、散布後20日前後にもう一度散布するよう書かれていた。思っていたよりも頻繁に撒くものなのかとびっくりした。


その2:甜菜はそのほとんどがF1種

甜菜はほとんどがF1(一代交配種)だと、『タネが危ない』(野口 勲・著/日本経済新聞出版社・刊)で読んだ。F1種の育種には、雄性不稔が使われることが多い。雄性不稔は、おしべを作ることができない遺伝子を持った突然変異株のことで、簡単に説明するとオス側の不妊症のようなもの。

『タネが危ない』
(野口 勲・著/日本経済新聞出版社・刊)

清涼飲料水にはよくセルロースという繊維が入っているが、この原料のほとんどが甜菜の絞りカスだという。男性の精子数が年々減っているのは、清涼飲料水を通じて雄性不稔の甜菜から作られたセルロースをたくさん摂取していることと無関係ではないのではないだろうか、と野口さんは警鐘を鳴らしていた。セルロースは清涼飲料水以外にも、チーズやサプリメントなど、さまざまなものに添加物として入っているのを目にする。

雄性不稔というDNA異常を持った食べ物を食べ続けて、悪影響がないのかどうかは、研究されていない。「You are what you eat.(あなたは食べたものでできている)」という格言の通り、人間の身体は食べ物でできている。DNAに異常のあるものを食べ続けて身体に問題がないと言い切れるだろうか。私には根拠もなく、自信を持ってそう断言することはできない。

甘味を加えるには、他にも選択肢があるのだから、わざわざ雄性不稔の疑いのあるF1種の甜菜糖を食べるリスクととるメリットがあるだろうか。

ちなみに、サトウキビは栄養繁殖性植物(竹みたいに地下茎で伸びて増える)で、F1種の育種をすることはそもそもできないらしい。


その3:着色されていることがある

甜菜は別名砂糖大根と呼ばれるが、大根の仲間ではない。根を利用するので、見た目が似ていることから大根の名がついているだけで、ビーツと同じアカザ科で、ほうれん草の仲間だ。ほうれん草も根を食べると甘い。

アカザ科の甜菜は、ほうれん草と同じように、シュウ酸を含む。シュウ酸は、尿路結石の原因になったり、身体にいいものではないので、ほうれん草は湯がいて水にさらしてなるべくアクを抜いたり、胡麻や鰹節など、シュウ酸の排出を促すカルシウムを多く含む食品と一緒に食べることが多い。

甜菜にもこのシュウ酸が含まれているので、精製して取り除く必要がある。えぐみにもなっておいしくはない。シュウ酸を含むアクをとると白くなる。丁寧にアクを取ると、真っ白な甜菜糖(ビートグラニュー糖)ができるそうだ。

しかし、精白された白砂糖は身体に悪いと知っている人が甜菜糖を選ぶので、白いと身体に悪いと思われそうだから、と、一旦真っ白になった甜菜糖を三温糖と同じようにカラメル色をつけ、茶色っぽくするのだという話をよく聞く。熱を加えて焦がしたり、カラメル色素を使う場合もあるらしい。

カラメル色素の作り方は、4種類あり、化学物質を使うやり方もある。どの方法で使われているかはパッケージを見ても判断できない。あきらかに茶色がかっているのに、原材料にカラメル色素とは書いていない甜菜糖も多い。

茶色がかっているてんさい糖は着色されているという話はよく聞くのだが、決定的な証拠は見つけられなかった。丁寧にアクを取っていないから茶色がかっているのであって、着色処理ではないという意見もあった。本当のところはどうなのかはわからないが、甘味をつけるもので、安全性が確実なもの(オーガニックのさとうきび糖、メイプルシロップ、アガベシロップ、米飴、はちみつ…などなど)は他にいくらでもあるので、わからないものは避けるに越したことはないように思う。

ちなみに、サトウキビは絞ったまま煮詰めるとミネラル豊富な黒砂糖になる。黒砂糖が合う料理もあるが、色が黒くなると困る料理もあるので、ろ過したり、研いだりして、精製して、色を薄くするが、粗糖や含蜜糖と呼ばれる状態で茶色がかっている。粗糖や含蜜糖と呼ばれるサトウキビ由来の砂糖は、絞ったままに近いから茶色いのであって、着色によるものではない。


私は砂糖そのものをやめてかなり体調がよくなった。砂糖自体があまり身体によいものではないと考えているので、砂糖そのものを積極的におすすめはしない。甘酒や米飴、りんごジュースを煮詰めたもの、レーズン、デーツ、アガベシロップなど、本当に天然由来の代替甘味料のほうが、血糖値の上昇もゆるやかで、身体には穏やかな感じがする(とはいえ、甘味は身体を冷やす感じがするので、とりすぎはよくない)。

これらを知った上でも、甜菜糖を選びたい方には、オーガニックの甜菜糖がベターな選択肢かと思う。私が見つけたもの(リンク先参照)はスイス産で、着色処理はしていないようで白い。ただ、雄性不稔のF1でないかどうかまでは分からないので、積極的にはおすすめできない。

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何がいい、悪いはそのときどきで、状況と体調に合わせて、自分でよく考えるのが大切だと思う。ここに書いたことは、現時点で私が調べて知ることができた範囲での判断であり、今後、状況は変わってくるだろう。これを検索語のとっかかりにしたり、調べるたたき台として使っていただいて、ご自身でもよく調べられて、ご判断いただけたらと思う。

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