20220501

[本紹介]『自分をたいせつにする本』(服部みれい・著/ちくまプリマー新書)

服部みれいさんの本『自分をたいせつにする本』を読みました。

『自分をたいせつにする本』
(服部みれい・著/ちくまプリマー新書)

ちくまプリマー新書という中高生向けのシリーズから出ているのですが、大人になってから読んでも参考になるところがたくさんありました。

自分をたいせつにする、ということは、「利己的」「自分勝手」「自己中心的」「自分本位のわがままし放題」とは言葉がやや似ていて混同される可能性がありますが、それとは全く違い、むしろ逆だとされています。ほんとうに自分を大切にすることができれば、まわりとも自然に調和がとれて、まわりの人のこともたいせつにする状態につながるのだそうです。「自分で自分を満たす」ということが最近のテーマというか、ずっと、どうしたらそれができるだろうか、と手がかりを探していたところだったので、読んでみたいなと思いました。

自分をたいせつにするためにできることにはどんなことがあるのか、具体的な方法がたくさん紹介されています。これまでの本で書かれている冷え取りやアーユルヴェーダの白湯や瞑想、呼吸法などについてもよくまとめてくださっています。白湯や冷え取りはすでに他の本で読んで、できる範囲で取り入れていますが、なんだか良さそうです。

みれいさんのこれまでの人生を振り返ったお話も赤裸々と言えるほど具体的に書かれていて、ずいぶんたいへんな歩みをされてきたのだなあ・・と思いました。いろいろな傷がまだ癒えていなくて、それに向き合って、自分で良くしていこうとさまざまな試みをされてきて、そのなかで良かったものをこうして本やさまざまな媒体を通じて私にもシェアしてくださって、ありがたいなあと思いました。

この本で初めて知ったエミール・クーエの自己暗示法はちょっとやってみようかなと思ってやってみています。お金もかからないし、簡単にすぐ取り組めます。もともとがフランス語ですが日本語だとどうもあまりしっくりこなかったので(こういうのを日本語で言うと直球過ぎて照れくさい感じがして……)、英語でEvery day, in every way, I am getting better and better. と唱えてみています。

朝起きたときと夜寝る前に20回ずつがおすすめということでしたが、朝もドタバタしているし、夜は途中で寝てしまうことが多かったので、一日の間の気がついたときにちょこちょこと頭の中で唱えています。声に出してというのも状況的に厳しいので、頭の中で唱えています。まだ大きな変化は感じませんが、どんな変化が起こるか少し楽しみです。

きぐるみ問題の話は、私にとっては少し意外でした。この本の中に、「自分風」の「きぐるみ」の話が出てきます。それを脱いでいくことが大切だと書かれていて、「へえーそうなんだあー」とちょっと発見でした。

小さいときから、まわりの人たちが、大人も子どもも含め、「きぐるみ」を着ているのは気がついていました。それは、まわりとうまくやるためであったり、自分の心を守るためであったり、心の中の平和や自由を守るためなのだろうと思っていました。

私はと言えば、洞窟にたてこもることはあっても、「きぐるみ」はどうしたって着られない人間だったので、他の人々がいる場所に出ているときに、うまく「きぐるみ」を着て楽しくやりすごせる人たちがうらやましかったです。嫌なものは嫌。人がどう言おうが好きなものは好き。いつでも鎧も盾もなしにぶつかっていき、だいたいいつも傷だらけでした。あんなふうに「きぐるみ」でやりすごせるなら、心の中の平和や自由はどうにか守れるのではないか。そんなふうにまわりの人たちを見ていました。

大人になってからは離れておいたほうがよさそうな人には極力近づかないことを選択できるようになりましたが、子どものころというのは、クラスメイトは選べませんし、どんな教師に当たるかもわかりませんし、近所の人や親戚にどんな人がいるかもわかりません。自分で選べない人間関係の中で、無防備にむき出し状態では、本当にたいへんでした。「きぐるみ」を着ることができたら、どんなにか楽だろうと思っていたものでした。

振り返ってみると、今まで、まわりの人がやるから自分もやる、そういうものだからそうしておく、というのはたぶん、したことがないと思います。だから「なぜやらないのか?」とまわりの人に聞かれたりして気まずかったり、聞かれたからと正直に答えてひんしゅくを買ったり、まわりから浮いてしまって変な目で見られて居心地がわるかったり、そんなことがしょっちゅうでした。好いてくれる人にはとことん好かれるけど、嫌いな人にはとにかく嫌われます。クラスのボスキャラみたいな子や担任の先生に好かれれば平和に過ごせましたが、嫌われたらたいへんな一年になるものでした。

「きぐるみ」が着られたら楽だろうなーと思うことがありましたが、みれいさんのお話を読んで、着ている人たちも実はそんなに苦しいものなのかと、結構かなりびっくりしました。後々になって「きぐるみ」が毒素になってそれを排出するのがたいへんという苦労というのは、そんなにも大変なのかと思いました。自分じゃないものになりきるのは、精神的にきついだろうと想像することがありますが、まわりの「きぐるみ」を着ている人たちのほとんどは「きぐるみ」を着ていることにすら気がついていなさそうだし、世間と同じ考え方に同調しているので、抵抗とか不協和音とか全く感じていなくて楽そうだし、楽しそうに見えていました。もし実際に深く話を聞くことができたら、実はしんどいという声が聞こえてくるのかもしれません。

「きぐるみ」は脱いだほうがよいというお話でしたが、すぐに素っ裸になったりはせずに、徐々に外していくのがいいのではないかなあと思いました。「きぐるみ」も、未成熟な今の世の中を生き延びるためのサバイバル術の一種だと思います。意識的に脱ぎ着できるなら、脱げるところでは脱いで、着とかないといけないところでは着といて、着とかないといけないところにいることを徐々に減らして、脱いでおける時間を長くする、というのがいいのかなと思ったりします。私みたいに最初から「きぐるみ」が着られない人間は、完全に隠れているか、ずたぼろになりながらやっていくかでした。ずたぼろになっても傷や毒素は生じます。「きぐるみ」を着ることでできる毒素とどっちがマシかは、正直なところ、わかりません。

スピリチュアルな話は、私自身が直に体感できていないためにまるごと受け入れるのはまだ早いかなと感じる部分も個人的にありましたが、本当にたくさん、みれいさんが良かったと感じられていることをたくさん盛り込んでくださっていて、自分で考えたり試したりして、自分をたいせつにする方法を見つけていけるヒントがたくさんありました。イラストもほんわかしつつどーんとしていてとても好きでした。こんなにたくさんのことを教えてくれて、とてもありがたい本だなーと思いました。

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