20210915

[本紹介]『にげてさがして』(ヨシタケシンスケ・著/赤ちゃんとママ社・刊)

大きめの本屋さんに立ち寄ったとき、ヨシタケシンスケさんの新しい絵本を見つけました。タイトルは『にげてさがして』。

『にげてさがして』(ヨシタケシンスケ・著)

読んでいて、私がずっと思っていたことをそのままずばり絵本にしてくれている!と感じて、なんだかすごく興奮してしまい、2度立て続けに通読しました。私にはこんなふうにわかりやすく伝わりやすく表現できないので、こんなふうに絵本に描いて多くの人に伝えてくれるなんて、本当にありがたいと思いました。

子ども向けの絵本や昔話では、逃げるのは鬼とか弱い人とか、わるいやつか弱いやつのすることで、桃太郎とか金太郎とか強い立派なヒーローはどんな状況でも逃げずに立ち向かう、というパターンが多いように思います。小さいときからこういうストーリーに多く触れているうちに、逃げることは情けないことという刷り込みがなされているように思います。

ヨシタケさんのこの絵本のように、逃げてもいい、逃げるために足がある、自分がのびのびできる場所を探して動くことは弱いことでも悪いことでも恥ずかしいことでもなく、賢いことだというメッセージを発している本に小さいときに触れることができたら、いじめで悩んだり、合わない学校に行き続けて自分を見失ったりしなくても済むかもしれないなあと思いました。

私のこれまでを振り返ってみると、保育園からは脱走する(プールの時間に保育士に後ろからいきなり後頭部を押されて顔を水に浸けられて命の危機を感じたため)、小学校は途中から行くのをやめる、新卒で入社した会社は数ヵ月でやめる…と、合わないところからは逃げ続けてきた人生でした。勉強は好きだったので家でマイペースに勉強して、大学も行きたいところに入れたし、今もやや不安定ながらも好きな仕事ができています。逃げ続けてきましたが、それなりに暮らせています。逃げることは恥ずかしいことでもなんでもないと思います。耐える経験も忍耐力が鍛えられたりするのかもしれませんが、無駄に消耗する前にさっさと逃げて、やりたいことに時間を使うほうが有意義です。

生き物たちを見ていても、無駄な戦いはしません。電線に止まっている鳥たちが、自分の場所を取られそうになったら戦わずにさっさと別の場所に移動して譲ってしまいます。のら猫も、人間と出会ったら、勝てそうにないと判断してさっさと一目散に逃げていきます。よほどのときは戦うこともありますが、立ち向かうことが美で逃げることが恥というような考え方は全くしていないように見えます。

合わない人やグループとうまく距離を置いたり、うまくやり過ごしたりすることや、自分に合う場所を探せるようになることは、人生を切り拓いていくうえで大切なスキルだと思います。耐えて耐えて耐えきれなくなって、心を病んでしまったり、生きることに絶望を感じてしまったり、そうなる前に上手に逃げられるように、「逃げてもいいんだよ」というメッセージはとても重要だと思いました。