『自分の薬をつくる』(坂口恭平・著/晶文社・刊)を読みました。実際に行なわれたワークショップをもとに作られた本で、悩みのある人々の話を坂口さんが聞いて処方箋を書くという形式で進んでいきます。
『自分の薬をつくる』 (坂口恭平・著/晶文社・刊) |
著者の坂口さん自身も躁うつの症状に悩まされてきて、どう付き合っていくかを考えて、さまざまな実践を重ねられ、その結果、たどりついた対策や方法を紹介してくれています。
そのうちの1つは、坂口さんが「しおり」(旅のしおりのようなもの)と呼ぶ、ゆるいスケジュールのようなものを作って、それに従って動いていくことでした。ぎちぎちに決めて「守らなければ」となるようなスケジュールは余計にストレスになりますが、ある程度、スケジュールが決まっていて、「次は何しよう?」と迷うことなく、「次は何」「次はこれ」とどんどん動けるようにしたほうが、うつの気が入り込みにくいといいます。
たしかにそれはあるかもしれないと思いました。私は普段、天候や状況に応じて使える時間を予測し、その都度、今何をするか検討して動いていて、それだけでもかなり消耗します。「何をしようか」と考えているときに、あと何分だからこれはできない、これはできそう?いやできない…と考えていくと、できないことが多くてうんざりしてきたり、終わっていないタスクがどんどん頭に浮かんでしんどくなったり、それがうつの気(け)の入り込む原因かもしれないと思いました。
…………だが、しかし…。現実的に考えてみると、しおりを作ってそれをたどっていくというのは私の今の暮らしでは不可能で、今のように状況に応じてやることを決めてどうにか1日をまわしていくというのを続けていくよりほかありません。でも、もう少し、シンプルにやることが決められるような工夫はできるかもしれません。月に1~2回程度、半日でもいいので、自分以外のファクターがない状態で「しおり」を作って過ごすというのもリフレッシュになるかもしれないとも思います。
他には、アウトプットの重要性を繰り返されていました。情報のインプットは何気なくどんどんしているわりに、アウトプットはしていないと。食べ物は食べたら(=インプット)、身体に必要なものに変わったり、不要なものは排出されたりしてアウトプットされる。呼吸も、息を吸ったら(=インプット)、吐く(=アウトプット)。すべてのものはインプットしたらアウトプットがセットになっているのに、情報のインプットの場合はアウトプットされることが少ない。もっと気軽にアウトプットしていいと坂口さんは書かれていました。息を吐くようにもっともっと気軽に、と。
それでもやっぱり、出し方は大事だと思ってしまいました。ぽんぽん、ぺらぺら、そんなに気軽に何でもかんでもしゃべったり、ところかまわず書き散らしたりというのは私には無理だなあ…と思ってしまいます。暴言になってしまって、他者を傷つけることになっては嫌だし、まわりの人のことを許可なく書き散らしたり話しまわったりしてプライバシーの侵害になるのも困ります。
でも、もう少しアウトプットはしていったほうが心の健康のためによいのかもしれないと思いました。ブログに書く、人に話す、(自分だけが見る)ノートに書くなど、どのアウトプットの手段が適切かどうか、選んだ手段に応じてどのようにアウトプットにするのが適切か、そういうのはよく考えた上で、もう少し、取り入れた情報を出していく必要を感じました。
本もただ読んで終わりではなく、こんなふうに感想や内容や考えたことなどをブログに書いたり、料理や縫い物など作り方の本を読んだらその中の料理を作ってみて、自分の作りやすいようにアレンジしたり、何らかのアウトプットに持っていくように心がけてみようと思いました。ブログを再開しようと思えたのは、この本を読んだことも要因の1つになっています。アウトプットの場を作ることは大切だと思いました。ただ読む/見る/聞くだけよりも時間はかかりますが、ちょっと楽しいと感じられる範囲でアウトプットすることは大事だと実感しました。心の凹んだ感じも起こりにくくなってきたような感じもします。どこにも出せないようなことは、人に見せない紙に書き出すようにしたら、すっきりして心が軽くなり、前よりも少し余裕を持ってストレスに対処できるようになったような気がします。
こんな感じで、読んでいると、自分なりの心のバランスのとり方、健康の保ち方をいつの間にか考えていて、試したくなってくる…というそんな不思議な本でした。さまざまな人が登場して、リアルな話をして、それに対する処方箋を坂口さんがご自身の経験をもとに提案するというのは、リアルなケーススタディを読んでいるようで、「自分の薬」を自分でつくるのにこれほど役に立つものはないかもしれないと思いました。
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