20190416

「言葉をまだ話さない子に大人の話はわからない」?

小さい子は大人の言っていることはわからないと思っている人も多いように思うが、そうでもないように思う。まだ話すことができない子も、語彙がないないだけで、大人が話していることをなんとなく理解しているような気がする。

情報のやりとりではなく、込められた気持ちや意図を感じ取っているように思う。言葉の意味や定義を理解していなくても、話している人の想念をキャッチしているような感じがする。

先日、友人の家に遊びに行ったとき、1歳か2歳くらいの子が友人と一緒に出迎えてくれた。門口で迎えてくれた犬を私が「かわいいね」と言うと、「にゃー」と言って家のほうを向いた。「猫もいるよって」と友人が解説してくれた。「犬がかわいい」という言葉を理解しなくても、私が動物を好きだということをキャッチして、猫も紹介しようとしてくれたようだ。

その子はずっとごきげんで、私たちのそばで一人で遊んでいたが、しばらくして様子が変わった。引き出しを開けまくって中身を出しまくるなど、いたずらをしまくる。猫の首を引っ張って、頭を尖ったプラスチックの札でぐりぐり切るような動きをする。止めても止めない。猫は痛みで目をまんまるに見開いている。

「何で急にあんなふうになったんだろう?」と帰りに振り返ってみると、その子の様子が変わったのは、狩猟をする近所の年配の男性が来た後だった。男性は友人と話していて、何の気なしに「男の子がおらにゃあかんやろ」と暴言を吐いた。私はとても嫌な気分がした。その子は女の子。そばで遊んでいたので、絶対に聞こえている。おっさんは、子どもだからわからないと思って、そんなことを言ったのだろう。

「男の子がいないとだめだ」と言われたので、「男の子」ではない彼女は、これまでアニメや絵本などで見てきた「男の子」のイメージを総合して、「男の子らしい」振る舞いをしはじめたのではないか。そんなふうに思えてきた。

子どもは言葉を話せなくても、言われていることを理解しているのではないかと思う。わりと大きくなってから外国語を勉強するときのように、辞書を引かなくても、言葉の意味を覚え、いつのまにか話せるようになるのは、そのためではないだろうか。

子どもだからわからないと思って、その子のいる前で、よくない言葉を話したり、その子を否定するようなことを言ったりするのは、大人に対してそうする以上に、望ましくない影響を与えかねない気がする。子どもは言葉を話せなくても、自分が発する言葉の背景にある想念をかなりの感度でキャッチしていると考えていれば、子どもがいる前で使う言葉に、もっと慎重になれるだろう。そういう大人が増えてほしいと思った。

「子どもだからわからない」と思って、大人がとんでもないことを言っている話を聞いたり、そういう場面に居合わせてしまうことはよくある。もし、そういう大人の発言が、聞いている子どもの自己肯定感を削いでしまったり、不自由な思想を植え付けてしまったりする場面に出くわしたら、どういう言葉をかけてあげたらいいのだろうか。軌道修正するために、自分にできることはなんだろうか。それができる人間になりたいと思った。

)関連記事