食べ物を買うとき、原材料のラベルを確認するだろうか。
何も知らなかったときでも、私はよくラベルを見ていた。親がよく飲んでいた栄養ドリンク剤のラベルで、カラメル色素、パラベン、果糖ブドウ糖液糖などを目にしていた。食べてもいいものかどうか疑う気持ちはまったくなく、単に、国で認可されているものなのだから大丈夫だろう、くらいにしか思っていなかった。
翻訳の仕事で訳した企業の非財務的価値に関する評価報告書で、パラベンなどの化学物質に関する記述を読み、日本で認可されていても、海外では危険視されているものもあって、ほとんどは危険だとは証明されていないが、完全に安全だとも証明されておらず、「疑わしきは使わない」というリスク軽減意識のある先進国では使用を控える傾向にあることを知った。よくわからなくても、ラベルを見ていてなんとなく覚えていたおかげで、その記述と、食の問題とがつながった。
それをきっかけに本や勉強会や、詳しい人に話を聞いたりして勉強していくうちに、よくわからないものは食べないことにしようと思うようになった。『食品の裏側』の著者で、もともと添加物を売り歩く仕事をしていた安部司さんも、ラベルを見て、台所にない材料が入っていたら、それを使わなくても作ることができるのだから、わざわざ食べる必要はないといったことを書かれているのを読んだ記憶が残っている。
例えば、パンを例にとって考えてみる。パンは、小麦粉とパン酵母と水があれば作れる。柔らかくしたければ、糖分やオリーブオイルなどの油を加える。フォカッチャのように塩味を効かせたければ、塩も加える。小麦粉、酵母、粗糖、オリーブオイル、塩、これだけでも作ることが可能だし、そうやって作っているパン屋さんもある。
しかし、市販のパンを見てみるとどうだろうか。乳化剤、マーガリン、酸味料、イーストフード、加工デンプン、酸化防止剤、グリシン、なんだかよくわからないカタカナのオンパレードだったりもする。
これらのよくわからない台所にないものたちは、危険だと証明されていなくても、安全だとも証明されていない。複合して長期的に微量ずつ摂取した場合の健康への影響は調査されていない。マーガリンはトランス脂肪酸が含まれる恐れがあるし、イーストフードは一括表示になっているので実際には1種類ではなく、どれだけの種類が含まれているかわからない。添加物の多くは、遺伝子組換え原料を使っている可能性が高いが、遺伝子組換え原料かどうかの表示はない。
イオンのプライベートブランドのトップバリューの製品には、最近、「乳化剤:大豆由来(遺伝子組換え不分別) この製品には遺伝子組み換え原料が含まれている可能性があります」といった表示を載せてくれるようになった。安さ最優先で気にならない人は買うし、遺伝子組み換えはできるだけ避けたいという人は知らずに食べてしまうという事態を避けることができるようになり、ありがたい。
遺伝子組換えは、物質としては変わらないので問題がないというのが推進派の言い分だが、遺伝子を組み替えて不自然な状態になったものを長期間摂取し続けて、本当に人間の身体に悪影響はないのだろうか。何よりも、除草剤の問題がある。遺伝子組換えと除草剤はセットだ。遺伝子組換えは除草剤を撒いても枯れない遺伝子を持たせ、除草剤を上から撒いて、除草の手間を省き、収穫を容易にする。遺伝子組換えを研究している企業は、除草剤を販売している企業でもある。遺伝子組換え作物は大量の除草剤を浴びて育っている。その除草剤の主成分であるグリホサートは、国連機関からもおそらく発がん性ありに分類されている。
除草剤耐性のほかに、虫に耐性を付けるために遺伝子組換えをする例もあるが、それを食べた人間にも効いてしまって、リーキガット症候群という大腸に穴が空く症状が出る危険性を指摘する研究結果もある。
前者のように、小麦、パン酵母、粗糖、塩、オリーブオイル、みたいなシンプルな材料でも作ることができ、探せばそれも売っていて手に入るというのに、後者のように、危険性がよくわからないものを入れて作ったものをわざわざ食べるメリットがあるだろうか。安い、どこでも売っていて気軽に買えるといった短期的なメリットはあるのかもしれないが、健康や美容へのリスク、環境へのリスクを考えると、むしろ高くついて、簡単には解決できない難しい問題を引き起こしてしまいそうだ。
買い物をするときにラベルを確認していると、「うわーやっぱり裏見るんだ!」と驚かれることもある。「いや、なぜ確認もせずに、何が入っているかよくわからないものにお金を払えるの? ましてや身体に入れられるの?」と言い返したくもなるが、見てもわからない、面倒くさい、細かくて見るのがツライ(視力のよくない方)、といったところかもしれない。
ひとまずは、台所にないようなよくわからないものが入っていないかどうかを確認して、入っていなければ買うか検討する、という基準でラベルを確認してはどうだろうか。それだけでもさまざまな発見がある。自分の健康と自分が生きていく地球の環境をリスクにさらすようなものにお金を使うのは賢明ではない。
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