小豆島にあるhomemakersという店名のカフェのことをガイドブックかなにかで読んで、なんとなく頭の片隅にこの単語があった。homeをmakeする人―思い通りの暮らしの場を創造する人たちという感じで素敵な名前だなーと思っていた。
翻訳をしていて、homemakerという単語に再び出くわした。辞書では、「主婦」「主夫」が訳に当てられていたが、やっぱりしっくりこない。英語でも昔は、いわゆる「専業主婦」のことをhousewifeと言ったが、今は特にアメリカではhomemakerのほうがこのまれるそうだ。検索してみたら、full-time homemakerという表現もあった(たとえば、コチラのThe Japan Timesの記事で使われている)。日本語の「主婦」という言葉は、家事が「婦人」すなわち女の仕事、という感じがして嫌な言葉だと思うが、ほかに代わる言葉は今のところ存在しない。
stay-at-home mom(家にいる母親)とかstay-at-home dad(家にいる父親)とかもたまに見かける。小さい子どもがいるとどちらかがずっと家にいて面倒を見ないといけない時期があるからだろう。でも、フリーランスとか、在宅勤務とか、家ですきな仕事ができたりとか、家にいて収入を得るのが当たり前になったら、そのうちこれらの表現も使われなくなってくるかもしれない。
家事をテーマにブログを書いている人とか、家事がそのまま収入につながる仕事になっている人もいる。日本語では「主婦ブロガー」と自称している人も多いけど、英語ではhousewife bloggerとは訳せないと思う。片付けや掃除、料理などについて文章を書いたり、講座を開いたり、コンサルティングの仕事をしたりしている女性のことを、日本の雑誌ではやはり「主婦」(「主婦ならでは」とか「主婦の知恵」とか)と表現することが多いし、パートナーの話題が出て来ると、十中八九「奥さん」「ご主人」になってしまうのだけど、他にいい表現に代わらないものだろうか。
男性が外で働いて、女性が家を切り盛りして、という時代はとっくの昔に終わっている。なのに、言葉だけは残っていて、炊事、洗濯、掃除といった家事は女性の仕事というイメージを強めている。女性も外や在宅で働いたり(家にいても仕事の時間を割くことには変わりない)しているにもかかわらず。たとえ、同じくらい働いていても、男性が家事をちょっとでも分担すると「エライ」とかほめられるし、男性に分担してもらうと女性は「恐妻」「尻にしく」などと揶揄される。女性が家計の収入を主に稼いできて、男性が家を切り盛りしていたとしたら、その男性のことを、「女々しい」とか「情けない」とか「(女性が男性のことを)甘やかしている」と、今度はバカにする。当人どうしがそれで良くて、それが自分たちの得意なことややりたいことにマッチしていれれば、そんなものはどっちでもいいではないか。男であるか、女であるかで左右されることではない。
同じく家事に従事する人を指す言葉でも、日本語の「主婦」と、英語のhomemakerでは印象が大きく異なる。日本語の「主婦」は女だからやって当たり前という感じでやる気が失せるけど、英語のhomemakerは暮らしの場を創造する人という感じがして、クリエイティブでわくわくする。日本語にもこういう言葉が生まれてほしい。
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