包装プラスチックはリサイクル用にゴミ袋が分かれているので、リサイクルされているものと思っていたのだが、メールニュースにはこう書かれていた。
分別したプラスチックは、リサイクルで新しく生まれ変わっているものと思っていました。でも調べてショックを受けました。実は日本で、循環するプラスチックはわずか。ほとんどは”燃料”になったり、海外に輸出されたり、役立てられずに焼却されたり埋め立てられたりしているんです。メールニュースに参照元として掲載されていた一般社団法人プラスチック循環利用協会の資料「2016年プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況」(2017年12月発行)によると、リサイクルされているプラスチックはわずか23%で、66%は焼却処分されていた(固形燃料とセメント原・燃料にされているのが17%、発電焼却が31%、熱利用焼却が9%、単純にごみとして燃やされているのは9%)。7%にあたる60万トンは埋め立て処分されているが、プラスチックは土には還らない。燃やせば有毒ガスが出る。
メールニュースでは、一人一人が日々の生活でできるプラスチックを減らすための取り組みとしてこんな感じのことが勧められていた。
- 買い物袋(エコバッグ)を持ち歩く。
- 飲み物用の容器(マイボトル)を持ち歩く。
- 食べ物用の容器を持ち歩く。
- パン屋さんで小分けの袋を断り、持参した袋や容器に入れてもらう
- 野菜や果物は、無包装で販売されている市場や八百屋さんで買う
- 家庭菜園で食べ物を育てる
プラスチックの使用を減らすこうした地道な努力は、焼却されたり、埋め立てられたりするプラスチックを減らすだけではなくて、海のプラスチック汚染の問題の解決にもつながっていく。自分はポイ捨てをしていないから関係ない、と思いがちだが、分別して出しても埋め立てられているかもしれないし、風で飛ばないように埋め立てられているかもわからない。使う量が減っていけば、プラスチックの製造自体がなくなったり、より環境に負担の少ないものに変わったりしていくのではないかとも思う。
年々増え続けるプラスチックごみは、今後少なくとも500年は土に還らないと言われている(グリーンピース・ジャパン「人類がこれまで作ったすべてのプラスチックがまだ地球上に存在している」より)。「太平洋ゴミベルト」とも呼ばれる海に流れ出たプラスチック製品がうず巻く北太平洋水域の面積は、フランス国土を上回るほどだそうだ。
海に流れ着いたプラスチックごみは、海中で分解されて有毒物質を出すという研究結果もある。たとえば、プラスチックの一種のポリスチレンは、海中で1年以内に分解が始まり、ビスフェノールAなどの化学物質を海に浸出させていくと日本の科学者が研究結果を発表した(WIRED「太平洋ゴミベルト:プラスチックの濃縮スープとなった海」2009/8/24より)。
プラスチックスープの海―北太平洋巨大ごみベルトは警告する 90年代に「北太平洋ごみベルト」を発見したCharles Mooreさんの著書 |
分解されなくても、海を漂っているうちに波や紫外線で砕かれて直径5ミリ以下のマイクロプラスチックになり、魚の胃袋に入っていることも調査で明らかになっている(グリーンピース・ジャパン「海がプラスチックでいっぱいになる前に(後編)」より)。全容が明らかになっていないだけで、魚食べることでマイクロプラスチックやそこから出る有害物質を人間が摂取しているという可能性もある。
海に出たプラスチックの問題はこれだけではない。鳥や海の生き物が誤って食べ、悲惨な死につながってもいる。オーストラリアの2015年の研究によれば、海鳥の90%がプラスチックを誤飲しており、その数は2050年までに100%になる見込みだという(ナショナル・ジオグラフィック「海鳥の90%がプラスチックを誤飲、最新研究で判明」2015/9/7より)。絶滅危惧種のアオウミガメは、50%がプラスチック製品などのごみを誤って食べてしまっている(AFP時事「アオウミガメのプラスチックごみ摂取が急増、豪研究」2013/8/12より)。
プラスチックはなるべく使わないようにしたいと思っているが、完全にゼロにするのは難しい。加工食品だけでなく、米や小麦粉や豆類、塩や味噌などの原材料も、お店で買ってくるものはたいていプラスチック製の袋や容器に入っている。産直に行っても、マルシェに行っても、生産者さんがきれいにビニール袋に小分けにしてくれている。タリーズやスターバックスでマイボトルを忘れたとき、うっかり「マグカップにお願いします」と言い忘れようものなら、もれなくプラスチックのフタがついてくる(紙コップも使い捨てにしていまうことになる)。量り売りのお店もあるが、まだまだごくわずかだ。
個人レベルでできる取り組みも大切だけど、町や市、国レベルでの取り組みも効果が大きいのであきらめずに注視していきたい。海外ではプラスチックの使用を規制する自治体も出てきている。インドでは2016年3月にカルナータカ州政府がプラスチックの使用を完全に禁止(プラスチック袋、プラスチック皿、カップ、スプーン、ラップなど)。プラスチック袋やプラスチックボトルの禁止や使用制限に踏み切った自治体も増えてきているようだ(「世界各国6カ所でプラスチックが使用禁止に!」グリーンピース・ジャパン2017/12/27より)。ホノルルでのプラスチック袋の禁止は、草の根レベルでの市民の取り組みの成果だという。
なぜ、使い終わってからの安全な処理方法を考え出す前に、見切り発車で普及させてしまう人工物はこうも多いのだろうか。個人レベルで今すぐできることは、プラスチックをなるべく使わないようにすることくらいしか思い浮かばないが、今あるプラスチックをわずかなエネルギーで安全にリサイクルする方法や、土に還って無害なプラスチックなど、代替する技術が開発されることも期待したい。
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