20180213

店の人のプライバシーを侵害する下世話な客について

しばらく前に、友人からこんな話を聞いた。

親しくしているお店に寄ったとき、客が2人やってきた。死んだ魚のような目をした年配の女性と、やや若く見えるが死にかかった魚のような目をした女性だったらしい。お店は女性と男性で切り盛りしているのだが、お店の男性が離れたすきに、お店の女性に「あれは彼氏ですか?」と年配の女性が聞いた。友人は内心、「それ、(お店と)関係あるかよ?」と呆れ返ったそうだ。

お店の女性が2人は夫婦関係であることを明らかにすると、客は「一緒に住んでいるのか」「実家に同居しているのか」など、野次ウマ根性まる出しで矢継ぎ早に質問を続けた。お店の女性は正直に何でも答えてしまっていたらしく、友人はこのやりとりにかなり閉口したそうだ。客の下世話な好奇心は満たされた。

友人が不快に思ったことの1つは、男性がいなくなったすきに女性にその質問が浴びせられたという点。女性のことをバカにしている意識が透けて見える。

日本ではまだ「男が上で女が下」という意識が男女ともに潜在的にあり、「普通、聞かないだろ?」と思うような、こういうプライバシーに関わる質問は、男性がいないときに女性にだけ聞かれることが多い。私もそういう経験はよくある。「子どもはいるのか」とか、「結婚してるのか」とか、「何歳?」とか、「大家さんとはどういう関係なのか」とか、買い物帰りに「何を買ってきたのか」とか…、相方(男)には聞かないような下世話な質問を、私が一人になるとされる。嫌な相手の欲望を満たすだけで、こちらには不利益しかないので、相方のスクリーニングなしに人と会うのはやめにした。

それでも最近は「このままではいかん」と思い、パーマカルチャーに取り組んでいる人たちがよく薦めている「共感的コミュニケーション」(もとの英語はnon-violent communicationなので「非暴力コミュニケーション」とも呼ばれる)に関する本↓

NVC 人と人との関係にいのちを吹き込む法

を買って読んでみたのだけど、そのままは使える感じがしなかった…(「あなたは私が~だから…とおっしゃっているのですか?」とか、本の通りにやったらケンカにしかならない気がする)。相手の感じていることや考えていることを敬意を持って受け止めるとか、「観察」と「評価」を分けるとか、感情を観察する、怒りを感じるときは怒りの「原因」と「刺激」を区別するとか、コミュニケーションの基本のところは参考になるところが多かった。

NVCのフレームワークには以下の4つの要素がある。「観察」(状況と相手の理解や感情、必要としていることを確認する)→「感情」(それに対して自分がどう感じているか)を伝える→「ニーズ」(自分が必要としていること)を述べる→「要求」(相手にしてもらいたいこと)を伝える、というのが基本的なフレームワークらしい。自分の場合はほとんどの場合、相手と状況の「観察」から先に進めないことがわかった。根本的なところをよく理解して応用してみるのが大事で、どんな言葉にして出すかは失敗しながら実践あるのみなんだと思う(もう少し試行錯誤をしてみてから、よく理解したと思えたころに、この本についてもじっくりお伝えしたい)。

脱線してしまったが、友人の話に戻りたい。そもそも、お店の人とお客さんという仕事上での付き合いの人に、プライベートな質問をするのは失礼だと思う。このお客さんはそんなにお店を大事に思っている感じでもなかったようだし、付き合いの浅いお客さんだったのではないかと話を聞いていて思った。あまり親しくない人にプライベートな話をしないのと同様に、相手が進んで話さない場合は、プライベートな質問はしないのがマナーだと思う。客だからどんな無礼講も許されるなんてとんでもない勘違いだ。

友人は「帰れよーーーっ(怒)」と叫びたい気持ちを抑えていたらしい。そんな品性の乏しい人物のためにお店の人の労力が使われる(その客はオーダーメイドの注文をした)のがもったいなく思えたそうだ。私だったら「丁重にお断りしているかも」と言ったら、友人は「うちら、客商売は向かないかもね」と笑った。追い返した分の買い物を埋め合わせできるかと言ったら、2人ともそんな大金持ちではない。なんでこんなろくでもないやつが大金持ちなんだろう。

自分がそのお店の女性のように、失礼な人に相方のことを「あれは彼氏か」とたずねられたら、どう切り替えしたらいいものか。

「”世間的に言うと友達です”とかは?」と相方。かつて、相方の話をするときに「彼氏」と言いたくなかったので、「友達が」と言っていたら、友人に「それ、彼氏のことやろ(怒)」とキレられたことが何度となくある。たぶん、友人なのに隠し事をされているみたいで腹が立ったのだと思う。「彼氏?」(恋愛関係かどうか)とか、「ダンナさん?/ ご主人?」(婚姻届を出しているかどうか)とか。それを知ったところで、不毛な好奇心が満たされるだけで、何もいいことを生み出さない。プライベートなことを知っていることと、相手のことを深く理解していることとは全く違う。有名人のプライベートな情報をテレビや雑誌で常にチェックしていくら仕入れたところで、その人物そのものの思想や感情などについて深く理解はできないのと同じだ。

全く違う話に切り替えるのもアリかもしれない。「彼は丁寧ないい仕事をしますよ」とか。面食らってそれ以上は聞いてこないかもしれない。ぶしつけな質問を不快に思ったことも少しはほのめかすことができるかも。

それか、「人生フルーツ」(ドキュメンタリー映画)で修一さんが英子さんのことを「彼女はぼくにとって最高のガールフレンドです」というみたいに、「彼は私にとって最高のボーイフレンドです」とでも答えるか。ハッピーすぎて不快になってそれ以上は聞いてこないかもしれない。

「パートナーです」が無難かなとも思う。そう言えば嘘ではないし、ビジネスパートナーなのか、それとも人生のパートナーなのかは、その人の理解力と観察力次第でわかることだろう。

とんちとユーモアがもっと欲しい。

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