20160717

『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』を読んで

日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』(矢部 宏治著)、このタイトルの問い、3.11後しばらくして、いろいろなことを知っていくなかで、不思議でしかたがなかった疑問です。

日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか


以下は内容紹介より抜粋。
なぜ戦後70年たっても、米軍が首都圏上空を支配しているのか。
なぜ人類史上最悪の事故を起こした日本が、原発を止められないのか。
なぜ被曝した子どもたちの健康被害が、見て見ぬふりされてしまうのか。
だれもがおかしいと思いながら、止められない。
日本の戦後史に隠された「最大の秘密」とは?
大ヒットシリーズ「〈戦後再発見〉双書」の企画&編集総責任者が放つ、「戦後日本」の真実の歴史。
公文書によって次々と明らかになる、驚くべき日本の歪んだ現状。
精緻な構造分析によって、その原因を探り、解決策を明らかにする!
<目次>
PART1 沖縄の謎――基地と憲法
PART2 福島の謎――日本はなぜ、原発を止められないのか
PART3 安保村の謎(1)――昭和天皇と日本国憲法
PART4 安保村の謎(2)――国連憲章と第2次大戦後の世界
PART5 最後の謎――自発的隷従とその歴史的起源
この問いに対して、アメリカの機密解除文書など、動かぬ証拠を多数上げながら、原因を紐解いているのがこの本です。原因を直視しない限り、解決に向けて、逆算してどのようなステップを踏んでいけばいいかを知ることはできません。つらい現実ではあるものの、しっかりを目を開いて見つめないといけない問題だと思いました。

この謎解き、そんじょそこらのミステリー小説とは比べ物にならないすごいのでは。トリックが巧みすぎて、しかもリアルに近づけたフィクションではなく、リアルそのものです。決して難しくはなくて、読みやすく、わかりやすく、語りかけるように書かれているので、国際法も法律も専門的に知っているわけではない私でもすんなり理解できました。

理解できたのですが、読み進めるごとに、ショックの連続です。Part 2くらいまでは日本で生きているのがほとほと嫌になりました。後半では、どうすればいいのか、解決に向けての提言が出てくるので、Part 2で挫折せずに、最後まで読むと希望が湧いてきます。見えている部分だけで対処しても根本的な解決にはならないので、この本に書かれている裏側の事情をきちんと把握している人が増えることは、根本的な解決に向けた大きな力になると思います。

この本は、本当に大きな役割を果たしていると思います。これまで、「日米地位協定」(*)や「日米原子力協定」という言葉はちっとも耳にすることがなかったけど、マスコミでもときどき触れられるようになりました。密約の存在を知った人も増えています。今まで闇に包み隠されてきた大きな問題に光を当てて見えるようにしてくれた本だと思います。

*以下の記事の端的な定義→「異国の駐留軍に与える恩恵を規定するもの」
日米地位協定の裁判権は他国に比べて不利なのか? / 伊勢崎賢治氏に聞く
http://blogos.com/article/183654/

それにしても、この謎の原因は、戦後から70年以上続いてきたものであり、想像以上に闇は深く広く複雑に入り組んでいる…。もしかすると、私が生きている間には解決できる闇ではないのかもしれないと思うくらい、大きな大きな闇でした。

でも、そこで諦めて何もしないでいたら、いつまで経っても変わらない。いや、私が何もしなくても、少しはいい方向に行くのかもしれないけれど、綱引きは一人よりも大勢のほうが強くなれると思う。私が生きている間には解決できなくても、解決の方向に向かって引っ張っていくことはできる。私が何もしなければ、このまま何百年も闇のままかもしれないけれど、私が何か行動すれば、解決までの時間を少し短くすることができるのかもしれない。

たとえ、それがわずか1秒でも、何もしないよりは、何かしていったほうが絶対にいいと思いました。少しでも早く、まともな民主主義国家になるように、見識も磨いていこうと思うし、正しい知識に基づいて考えて行動していきたいと思います。

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