20160724

『日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか』を読んで

先日の『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』に引き続き、『日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか』を読みました。この本は、国会議員の人には絶対読んでおいてもらいたいですし、国民全員が知っておくべき重要な事実が書かれています。
日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか

今、沖縄県の高江では、オスプレイのヘリパッドの建設をめぐり、普通の人間らしい暮らしと自然環境を守りたい市民が建設に反対しているのに対し、中央政府は機動隊を大量に動員して、暴力で市民を排除し、強引に建設を進めようとしています。160人ほどの村に、500~1000人もの機動隊を動員するってどうかしています。機動隊が市民の首を締めたり、街宣車から突き落とそうとしたり、警察が市民をひき逃げしたり、ということも起きています。
高江ゲート前に1600人が集結!参院選で当選した伊波洋一議員も駆けつけ怒り!「ハワイではコウモリのためにオスプレイの演習が禁止されている。沖縄県民はコウモリ以下なのか!」 (IWJ 2016.7.21)
田中龍作ジャーナルでも写真とともに現地の状況が報じられています。
【沖縄・高江発】 山城議長「これ以上機動隊の暴力に晒されたくない」
なぜ、こんなむごいことが行われているのか。国民を守ってくれるからこそ、私たちは警察や機動隊に税金を払っています。国民を守ってくれるはずの警察や機動隊が、なぜ国民を傷めつけるのか。

この本に答えがありました。沖縄県民は選挙ではっきりと米軍基地にNOをつきつけました。それなのに、なぜ、参議院選挙が終わってすぐにこんなひどいことをするのか。民意を何だと思っているのか。

昨年2015年9月に国民の反対を押し切って異常なやり方で強行採決された安保法制について、著者の矢部さんはこう書かれています。
「日米安全保障協議委員会(ツープラスツー)」でアメリカとの軍事上の取り決めがすでに結ばれている以上、日本政府にとって、国会の審議も、憲法をめぐる議論も、デモによって示された民意も、本質的にはほとんど意味をもたなかった。それらはどんな異常な手を使ってでも、無視し、乗り越えるべき対象でしかなかったのです。(p. 287)
この部分を読んで、高江も辺野古も、アメリカと約束してしまったことだから、どんな異常な手段を使ってでも、国民をねじ伏せて、強行しようとしているんだと思いました。日米安全保障協議委員会というのは、「外務・防衛担当閣僚会議」とも呼ばれ、日本の外務大臣と防衛大臣が、アメリカの国務長官と国防長官と直接協議して、軍事上の取り決めをするもの。議事録はほとんど公開されていません。これに参加している中谷防衛相が高江のヘリパッドについて、早期完成を目指すと語っています。
<高江ヘリパッド>早期完成目指す 中谷防衛相(沖縄タイムス2016年7月22日)
これ以外にも、アメリカとの軍事上の取り決めをする機構として、日米合同委員会というものがあります。これは、日本に駐在する米軍と米軍基地について、アメリカの軍部と日本の官僚が毎月2回会議をして話し合う機関で、ここで決まったことが、国会を通り越してまかり通っています。
もっとも問題なのは、この委員会で合意された内容は外部に公開する義務がなく、ほんの当たりさわりのないものしか公開されていないということ。つまり毎月、秘密の会議をおこなっているということです(p. 32)
過去60年間にわたって、ときには日本の憲法を機能停止に追い込んでしまうような重大な取り決めが、国民の目にはいっさいふれないまま、ここで決定されてきているのです(同)
いわばこの日米合同委員会こそは、これまで日本の戦後史に無数の闇を生み出してきた「密約製造マシーン」といえるのです(p. 36)
正常であれば、日本の官僚と話し合う相手は、本来、軍人ではなく、同レベルの相手、アメリカの外務官僚や大使館員であるはずなのに、エリート軍人と直接会議して決めているというところが、極めて異常で、アメリカの国務省からもやめるべきだと何度も主張されていますが、日本がやめてくれと言わないため、軍部の猛烈な反対によって、この状態がずっと続いています。検察も最高裁もアメリカの軍部の思うがままに操れるように巧妙に仕組まれています。
60年以上つづく、米軍と日本の官僚の共同体であるこの「日米合同委員会」が、検事総長を出すという権力構造ができあがってしまっているのです(p. 39)
「砂川裁判・最高裁判決」というひとつの判決によって、日本の最高裁は1959年以降、事実上、機能しなくなっているわけです。最高裁が機能しない状況のなかで、検事総長を出す権利を握っているのですから、日本の法的権力は、この日米合同委員会がにぎっているということになる。(p. 40)
ここで話し合って決まったことに、根まわしをせず真正面から立ち向かっていったら、もう終わり。ジ・エンドなわけですね。米軍関係者と日本の官僚、検察が一体となった「日米安保村」の総攻撃によってあっというまにつぶされてしまう。(p. 40)(こんどじっくり書きたいと思いますが、鳩山内閣がつぶされたのもこのせいだったというのです。)
このほかにも、戦後、日本の首脳が交わしてきた数々の密約の存在が明らかにされていました。沖縄で起こっていることを考えるうえで、そしてその解決について考えるうえで、この本に書かれていることをきちんと把握しておく必要があると感じました。この日米合同委員会と密約の歴史を理解していれば、アプローチのしかたが変わってくるからです。(反対運動にも選挙にも、意味がないわけでは決してありません。反対運動や選挙で民意を示すことがなければ、もっと状況は悲惨だったでしょうし、世論を大きく動かすこと、国際世論に訴えかけることは、日本の暴走とアメリカ軍の横暴を止めるうえで非常に重要なことです。アメリカ側でも国務省の中にはこれはおかしいと思っている人たちが実際にいるのですから)

この本は、アメリカの公文書を基にしています(だれでも読むことができます)。日本は臭いものには蓋で隠蔽し、改ざんし、ですが、アメリカは一定期間経てば、機密文書が公開され、だれでも歴史を検証できるようになっているというのが大きな違いです。

沖縄の問題は、沖縄だけの問題ではありません。日本人全員に起こりうることです。緊急行動としてできることをしながらも、この本に書かれている根深い問題を真正面から見据えて、長期的な観点から根本的な解決のためにできることも模索していきたいです。

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