20220630

[本紹介] 『菌の声を聴け』(渡邉格・渡邉麻里子・著/ミシマ社・刊)

大好きなパンやさん「タルマーリー」さんの本『菌の声を聴け』を読みました。

『菌の声を聴け』
(渡邉格・渡邉麻里子・著/ミシマ社・刊)

タルマーリーさんは、自家製天然酵母のパンとビールのお店で、野生の菌を採取して酵母とされています。私が知ったころには千葉県いすみ市にあったパンやさんでした。今は鳥取県の智頭町を拠点とされています。

前書きが「こんなクレイジーな人生はあんまり参考にならないかもしれにけれど、楽しみながら何かのヒントを共有してもらえたら、幸いである」と結ばれていましたが、本当にたくさんのヒントをいただきました。常識を超えていくまっさらな観察眼や探究心、一見失敗に見えることすらも過程でしかなく大きな発見や成功へつながっていくと実感させられるようなエピソードの数々、とても感銘深く読みました。井戸を掘る話もおもしろかったです。

最も印象深かったのは、必要なときに必要なことを与えてくれる人たちが次々に現れてくること。自分の気持ちにまっすぐに生き、実現を疑うことなく真剣に取り組んでいると、こんなふうに奇跡のような出会いや、渡りに船のようなことが起こってくるものなのかーと驚きました。それもまた発酵の世界と似ているような感じがしました。

冒頭で「大好きな」と申したものの、タルマーリーさんのパンをいただいていたのは、東京に住んでいた頃のこと。もう10年近く前になるでしょうか。タルマーリーのパンをお取り寄せしている都内の自然食品店でよく買わせていただいていました。入荷日が楽しみでしょっちゅう寄っていたので、お店の方にも「あ、パンの人だな」と覚えられていたようで、「今届いたところなので開けますね」と届いたばかりの段ボール箱を開けてもらって、選ばせてもらったことも1度や2度ではないような記憶があります。

その後、私も地方に移住し、タルマーリーさんは智頭町に移られていて、距離は近くなったので、いつか訪れてみたいな―とかねがね思っていました。本でお店の様子を見せていただいて、とてもうれしかったです。とても素敵なお店で、訪れてみたい気持ちが一段と増しました。

タルマーリーさんがこの本の前に出されていた『腐る経済』(講談社・刊)も、この本が出た頃にとても興味深く読みました。また読み返したいなと思っています。(文庫版も出ていました。)