20210724

カテゴライズと暗示

とある健康法を体系立てた方の本で、「冷酷だと(とある腎臓の不調)になる」と書かれていたという話を聞きました。教えてくれた方は見に覚えありだったらしく、「それって(かつての)自分のことだ!」と感じたと言って、教えてくれました。(その方は具体的な不調の名称を述べておられましたが、偏見につながる恐れがあるので、あえて書きません。)

それを聞いて私は「それって結構迷信入ってない?」と言いました。その症状につながる原因は、心の問題以外にも、食事や体質、先天的なもの、職場や住居の環境など、他にもさまざまな要素があるはずです。それなのに、冷酷だとその不調になるというのはやや短絡的だと思います。冷酷でもその症状を持っていない人もいるし、その症状になっている人で冷酷ではない人もいます。「(とある腎臓の不調)のある人は冷酷」という偏見につながりかねないと思いました。教えてくれた方にも率直に伝えました。

開祖のような人が断言していると、その人の信奉者たちはその人の発言をそのままそっくり信じ切って、流布することにもなります。逆も然りとは言っていないものの、「(とある腎臓の不調)のある人は冷酷」という考えも生まれてしまい、まかり通ってしまいかねません。

健康法、開運法、性格診断など、さまざまな人がさまざまなものを体系立てています。古代の伝承を紐解いたとされるものもあります。そういったさまざまな体系の枠組みの中で、公式や簡単なチェックリストを作って自分やまわりの人のタイプが何であるかを判断できるようにしているものも多いです。

そういったものはあくまでも参考程度にして、自分の今後のために役立てるのであればいいかもしれませんが、まるっきり信じ込んでしまって、そのタイプになりきってしまったり、ショックを受けたり、自信を失ったり、または逆に得意になって他者を見下したり、本来の心地良い自分からは遠ざかってしまうケースも少なくないように見受けられます。

あくまでも参考程度にしているつもりでも、なんとなく暗示にかかってしまうところもあるような気もします。

とある健康法の開祖のような人から、「ぜんそくあるでしょう? 肺に影がある」と言われたことがあります。自覚症状としてはぜんそくはないですし、小さいときにあったのかと思って親に聞いてもないということでした。咳が出ることもないし、息苦しいこともないし、肺が痛くなったりとかもないし、肺の影というのも全く思い当たりません。ないから心配することはないと思ったのに、なぜだかぜんそくや肺の健康関連の情報があると目が行ってしまう。そんなことが数ヵ月続きました。今思うと、「肺の病気なのかも」と暗示にかかってしまったのだと思います。暗示にかかって長くそれが続いてしまうと本当にそうなりかねないようにも思います。

また別の機会には、友人の友人でセラピストをしている人から数秘術を受けて(というか、どちらかと言うと練習に協力した)、特殊すぎて浮いていて地球人とはなじめないという診断を言い渡されたことがありました。同じ数字になって同じことを言われて当てはまると喜んでいた人もいましたが、私はこれは信じないと思いました。信じないと決意して突っぱねたつもりでも、しばらくふと思い出して憂鬱な気分になることもありました。「誕生日の数字だけで子どもだとか頭脳派だとか神秘的なエネルギーが強いだとか診断出して、偏見につながるのでは?」とも思いました。(私が受けたのがたまたま単純すぎただけで、数秘術もいろいろあるのだとは思いますが)

さまざまな健康法や開運法などは、自分が見つけた法則のようなものを、「これは他の多くの人にも役立つから広めたい」というような親切な気持ちから始めることが多いのではないかと思います。まわりの人に伝えたら効果が出て、あっちでもこっちでも教えてほしいと頼まれるようになり、自然に広がっていったという場合もあると思います。

親切な気持ちや善意で始めたことであっても、もてはやされたり、持ち上げられたり、地位が高まってきたり、発言力が高まったりしているうちに、だんだん教祖のようになってきて、断定的な物言いをすることも多いように感じます。断定的に言われたほうがわかりやすいので好まれるというのも一因だと思います。信奉者が増えていくうちに、教祖のような振る舞いを望まれるということもあると思います。

そういった創始者の言うことは、だんだん、真実ではないもの、真実ではないとは言い切れないまでもかなり怪しいものも含まれてくると思います。当てはまる場合もあるけれど、当てはまらない場合もある、それでもこうだと言い切ってしまう。「それってちょっと違うんじゃないの?」と、少し距離を置いて考えてみることが必要だと思います。事実をベースにして冷静に考えてみると、「違う」ということがはっきりすることもよくあります。自分の知っている範囲の事実だけでも違うということが分かることもあるし、それでもわからなければインターネットや図書館で調べてみると大概だれかしら調べてくれているのでデータや実験結果が出てくることがほとんどです。

全てが真実ではないにしても、そういった人の伝えていることの中には自分の役に立つ部分もあります。どこか一部違っているからと全否定するのはもったいないこともあります(その一部が決定的なものである場合もありますが…)。

食べ物の消化と同じように、一度入れたインプットはよく咀嚼して、必要なところは吸収し、不要なところは排出し、そのまま吸収できないものは適切な形に変換し、一旦吸収したものでも不要になったらデトックスする、というのが大事だと思います。エライ人が言っているからと鵜呑みにするのではなく、あくまでも主体的に。自分で試してみて、合うものは取り入れてみる、合わないものは取り入れない、アレンジして合うものはアレンジして取り入れてみる、定期的に見直して不要なものはやめていく、というのがいい付き合い方なのではないかと思います。