20180710

ネット右翼(ネトウヨ)になりやすい人たちとは?―『高齢者ネット右翼が増えている?』を読んで

私のまわりにはネット右翼(ネトウヨ)がいないので、直接遭遇したことはないのだが、SNSやニュースサイトやブログのコメント欄では結構よく見かける。数年前までは、ネトウヨってどこにいるんだろう、と思っていたけど、最近は見かける率がますます高くなってきた。

電凸攻撃(気に入らない内容を報じた放送局や新聞社に集中的に電話をかけて業務妨害すること)も報道機関が萎縮してしまうほどの問題になっているし、安倍首相の秋葉原での選挙演説に集まった人たちの様子を見て(映像を見たい方は動画サイトで検索すれば出てきます)、そんなにたくさんいるのかと唖然とした。

私がネット上で散見するネトウヨは、発言はほぼすべて信奉するだれかの受け売りかその継ぎ接ぎ(みんな同じようなことを書いている)で、目も当てられないような汚い言葉や汚いコラージュ写真を載せている。まともな議論は成り立たない気がする。こういうテキトー発言を放置してきたから、ネトウヨの長みたいなのが日本のリーダーになっている、という指摘する人もいて、それはとても身につまされるのだが、とてもではないが私の手には負えないと感じる。だが、どんな人たちで、なぜ、ネトウヨになってしまうかが知りたいと思っていた。根本原因がわかれば、もしかしたらどうにかできるかもしれないと思うから。

そのネトウヨに関して、こんな考察を読んだ。
第34回:高齢者ネット右翼が増えている?(By 鈴木耕  2018年5月30日 on マガジン9)
高齢者にネトウヨが多い印象は結構ある。高速バスに乗ったとき、斜め前の席に座った人がネトウヨだった。作業服を着た60代後半ぐらいに見える男性。中国をバカにするタイトルの文庫本を取り出して読みはじめたかと思ったら、すぐに飽きて、スマートフォンを取り出し、動画サイトでネトウヨのチャンネルを次々に視聴していた。動画は飽きないらしい。

この記事で紹介されていたネット右翼になりやすい人の5つの特徴が興味深かった。
① 最近、仕事をリタイアし、退職後に何もすることのない人
② 会社の中で、やや窓際的な部署へ異動させられた人
③ あまり仕事を評価されず、不満をため込んでいる人
④ これまで仕事以外にほとんど社会的興味を持たなかった人
⑤ 退職後、地域での交流がなく、孤立感を持っている人
⑥ 会社内でそれなりの地位にあり、部下を見下してきた人
 以上のようなタイプで、SNSなどをやり始めたような人が、一気にネット右翼化する危険性があるという。
知り合いがリアルでネトウヨに会ったと言っていて、どんな人なのか聞いてみたことがある。その人は、仕事をリタイアした70代後半の一見普通の人。①にあてはまるのかもしれない。自然を守ることにも関心があってボランティア活動にも参加している。かなり偉そうだけど、協力的で、まあまあどちらかと言えばいい人だという。櫻井よしこさんとか、決まった人の本を読みまくっていて、あまり社会に関心のない人にも貸しまくっている。お酒の席で、「朝起きたらまずYoutubeを見る」「オレの知識量はハンパないで」と胸を張っていたという。

だが、彼はこうも言った。「かかあはオレが殺したんや」。彼は数年前、妻に先立たれた。妻の早死の責任は自分にあると思っているのだろう。今は一人で暮らしていて、朝からネトウヨ動画を見て、昼から酒を飲む。

この話を聞いて、ネトウヨの父親にネトウヨ動画を見ないように説得することに成功したというツイッター投稿を思い出した。その子は、父親の心理状態を分析していて、ネトウヨ動画を見ていると、興奮状態になる、いわばハイな状態、フローな状態に入るらしい。ネトウヨの動画は、お酒やタバコのような刺激があって、一種の中毒症状になっているという考察だった。動画を見た後は言動がおかしくなるので、すぐにわかるという。わかりやすい言葉で、社会のことを断言し、自分が属さない集団のことを繰り返し攻撃しているのを見ると、快感を覚えるのだそうだ。

だれかをいじめて気持ちよくなるというのは私には全くわからない精神状態だけど、健全でない状態だということはわかる。知人の知り合いの70代ネトウヨも、妻に先立たれたことがきっかけで心のバランスを崩し、手軽に気持ちよくなれるものとして、ネトウヨ動画にハマってしまったのかもしれない。

スマートフォンの普及で、パソコンは難しいと敬遠していた高齢の方も、スマートフォンなら操作が簡単だからと、ネットで情報を得るようになり、ただ、比較検討をするメディアリテラシーがまだ培われていない、もしくは、スマートフォンでは比較検討がしづらいというのも、高齢者にネトウヨが増えている一因かもしれない。

ネット検索に慣れていない人は、たいてい、検索して一番上に来た情報が一番信憑性があると思っていることも多い。身近でもそんな人がいた。パソコンを敬遠していた知人がスマートフォンを持つようになり、何かを検索するときは決まって上から順に開いていく。私はリサーチの仕事が長いので、URLで信憑性の高さを判断する。上のほうに来るソースは、正しいこともあるが、だいたい、わかりやすく大げさに単純化されていることが多く、最近は離脱率が上がると検索ランクが下がるという理由で、根拠となる参照元のリンクもついていない場合が増えてきて、事実の検証がさらに難しくなっている。報告書なんかはPDFになっていることが多いが、スマートフォンでは開けないらしい(私はスマートフォンは使っていない)。SNSで流れてきた情報もすぐ鵜呑みにしてしまうし、危うくて見ていられない感じだった。

記事に出てきたまっとうな反撃で、おかしなことは通用しないと思い知らせることも大事。他方で、孤独な人をなくすような動き、仕事一色の生き方を愛のある方向へシフトすること、そういったアプローチも重要だということを、このネトウヨ現象というのは教えてくれているのかもしれない。

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