私はサーロー節子さんのスピーチのことを、ICAN国際運営委員の川崎哲さんのツイッターで知った。本当に素晴らしくて、心を動かされた。つらい経験、暴力を正当化する世界という悲しい現実を語りながらも、希望に満ちた力強いスピーチだった。映像でも観客は総立ちでスタンディングオベーションを送り、涙をする人もいた。ぜひご覧いただきたい。
映像:
https://youtu.be/P1daV8n6fTY?t=1h11m40s
(上記URLは頭出しをしたものになります)
英文のテキスト全文:
https://www.nobelprize.org/nobel_prizes/peace/laureates/2017/ican-lecture_en.html
(前半はベアトリス・フィン事務局長、後半がサーロー節子さん)
サーロー節子さんのスピーチの日本語訳:
ノーベル平和賞 サーロー節子さん演説全文(東京新聞 2017/12/11)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201712/CK2017121102000059.html
これほど素晴らしいスピーチを日本のマスコミはどうやら小さくしか取り上げなかったらしく、たいへん残念に思った。リテラの記事で端的に説明されていたので以下に引用したい。
ICANの活動は日本の被爆者や市民団体が果たした役割が非常に大きく、授賞式にはICANのメンバーとともに広島・長崎の被爆者や広島市長、長崎市長も出席。すなわち、日本が世界から注目される大きな出来事だったわけだが、目を疑ったのは、日本のテレビメディアの伝え方だ。ICANのノーベル平和賞受賞が決まったときにも、日本政府はコメントを出さなかったし、マスコミでも大きくは報じられなかった。日本生まれで二重国籍を認められなかったためにイギリス国籍を選択したという作家のカズオ・イシグロさんの受賞のニュースとの温度差は激しかった。イシグロさんは長崎県出身で、母が被爆経験を持つことに触れて、ICANの受賞を祝うコメントをしている。
普段は「日本スゴイ!」が大好物であるはずのテレビのワイドショーをはじめ、ニュース番組でも、この話題をまったく取り上げなかったり、あるいはストレートニュースで消化したのだ。
いや、もっと驚いたのは、NHKの姿勢だ。ノーベル平和賞授賞式から一夜明けた11日の『NHKニュース7』と『ニュースウオッチ9』が、揃って平和賞授賞式の話題を取り上げなかったのである。(リテラ 2017/12/12「ICANノーベル賞授賞式でサーロー節子さん感動のスピーチも日本マスコミは無視! 普段は“日本スゴイ”が好物なのに」より)
日本は原子爆弾をアメリカに2発も落とされ、人体実験までされながら、日本の被ばく者をはじめとする核兵器廃絶キャンペーンに尽力してきた人々がノーベル平和賞を受賞したことを、なぜ、日本は喜べないのだろうか。
それは、日本の今の政府が、経済界とアメリカにひたすら追従する姿勢でいるからだろう。アメリカは核保有国であり、7月7日に国連で核兵器禁止条約が圧倒的多数の賛成で採択された際にも、アメリカはこれを非難し、署名しなかった。日本も足並みを揃え、署名しなかった。日本の今の政府はアメリカの核の傘に守ってもらうしかないと考えている。アメリカの核の傘に守ってもらっておきながら、核兵器廃絶に賛成などできないという理屈だろう。
サーロー節子さんはこうした政府に対してスピーチの中でこう語りかける。
核武装した国々の当局者と、いわゆる「核の傘」の下にいる共犯者たちに言います。私たちの証言を聞きなさい。私たちの警告を心に刻みなさい。そして、自らの行為の重みを知りなさい。あなたたちはそれぞれ、人類を危険にさらす暴力の体系を構成する不可欠な要素となっているのです。私たちは悪の陳腐さを警戒しましょう。一方、経済界は、戦争の危機があれば武器が売れる。経済界は武器が売れればもうかる。2014年4月には武器輸出三原則が事実上緩和され、死の商人と呼ばれる武器ビジネスに日本企業も参入できるようになった。経団連は武器輸出を国家戦略として推進すべきだとも提言している。2015年5月には国内初の武器見本市「Mast Asia 2015」まで開かれた。武器を売りたいのは日本の経済界だけではなく、アメリカの軍産複合体も日本に武器を売りつけたい。トランプ大統領は2017年11月の訪日後にツイッターで「日本からこれで武器とエネルギーの注文がじゃんじゃん来るぞ!」(私訳)といったようなことを投稿している。戦争の危機をあおれば現政権の支持率も上がる。両者の利害関係は一致している。
金もうけのために戦争をしようという勢力もあるが、サーロー節子さんのスピーチにインスピレーションを受けて動き出す人たちもいる。闇ではなく光のエネルギーをより大きくしていくために、真実から目を逸らさないこと、隠されている事実を知ろうと努力すること、武器輸出企業からは買い物をしないこと…ささやかなことでも日々積み重ねていきたい。
【参考になる書籍】
武器輸出と日本企業 (角川新書) |
戦後史の正体 (「戦後再発見」双書1) |
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