20170216

映画「スノーデン」を観て

オリバー・ストーン監督の最新映画「スノーデン」を観た。

アメリカ政府による行き過ぎた監視を内部告発したエドワード・スノーデン氏をモデルに、実話に基づいたフィクションとして、諜報機関で働くようになるまでの経緯から内部告発に至るまでの人間ドラマが描かれている。

「行き過ぎた」というのは、私の感覚だけど、アメリカ政府は、「テロ対策」と称して、メールや電話、SNS、検索履歴など、要人のみならず一般市民の非公開の情報を全て監視し、「コレクト・イット・オール」の方針のもと、世界中の全ての人を対象に、情報を記録し、必要に応じて検索することができるシステムを構築していた。これを命がけで内部告発したのがスノーデン氏だ。

少し前に「パソコンのカメラ、バンドエイド貼って見えなくしといたほうがいいよ」と言われた。パソコンについているカメラを外部から起動して盗み見ることができるシステムがあるのだという。「そんなまさか・・」と思いながら、念のため自分のパソコンのカメラに絆創膏を貼ったのだが、全く大げさな話ではなかった。映画を観たら、きっとカメラに何か貼っておきたくなると思う。知らないほうが楽に生きられたかも、とも思ったけど、自衛が大事だと思ったし、そのために知っておいたほうがいい事実がたくさん出てきた。

衝撃的な話が次から次へと出てきて、途中何度も頭を抱えたが、特に気になったのが、アメリカの軍部が日本のインフラにマルウェアを仕込んでいて、日本が同盟国をやめたらインフラをストップさせる(映画の中では日本の電気が消えていくという予想図が描かれていた)という証言。(後で紹介するIWJの記事によると、インフラにマルウェアを入れられているのは日本だけではないという)

こういう証言がある、というだけでも一大事で、日本では報道機関やインフラ関係の企業、学者さんたちが調査を始めるといった動きがあってもおかしくはないと思うのだが、全くそんな気配もない。おそろしくて聞けないのだろうか。(…というよりも、そもそも、日本の報道機関は、スノーデン氏の告発の重大性をあまりわかっていないようで、日本人ジャーナリストで初めて話を聞いた小笠原みどりさん*は、インタビューをするにあたって、なぜこれが重要なのかを説明するのに苦労したそうだ。)

*小笠原さんはそのインタビューを本にまとめている。
スノーデン、監視社会の恐怖を語る 独占インタビュー全記録

オフグリッド(電線などのインフラに頼らずに電気や熱などを自給する)を進めて、自分が困らないように、何かあったときにまわりの人たちにも分けてあげられるようにしていくことは、平和構築の面でも大事なことなんじゃないかと思った。食べ物の自給の割合を上げることも(電気が止まったら、信号や電車が動かないから、物流もストップする)。もしインフラをストップされたとしてもへっちゃらな国民になることも、対等にものを言える国どうしになるために、今からでも始められることだと思う。政府がどうにかしてくれたらいいけど、今のような政府では、それは望めない可能性が高い。

問題はすごく深くて怖いけど、どんなささやかなことでも何かしらできそうなことから始めて、少しずつ変えていくことくらいしか、今の私にできることは思い浮かばない。すぐに大きく変えられなくても、これからも関心を持って事実をしっかりと見つめて、自分は何をしていくのか、どう生きていくのかを考えていきたいと思った。

私の後ろに座っていた夫婦は、妻のほうが関心が高くて何も知らない夫を引っ張ってきたようだった。何も知らないでただ純粋に映画として観た夫も、「あーおもしろかった! (始まる前)寝かけてたけど、目が覚めてきた」と話していた。単なる映画として観ても普通に楽しめる映画だった。私は心臓が弱いので、すでに逃げ切れたことを知っているにもかかわらず、何度も危ないシーンで心臓が痛くなったけど…。パートナーや仲間たち、想いを引き継いだジャーナリストたちとの人間ドラマにも感動したし、スノーデン氏の高潔さにも心を打たれた。

特に考えさせられたのは、愛国心とは何か、ということだ。スノーデン氏は、諜報機関に入る前、国に貢献したいという想いで、軍隊に入隊している。訓練中に足を骨折して除隊になり、「何か他のことで国に貢献しなさい」という軍医の言葉を受け、諜報機関で働くことを模索。類まれなITスキルがあったため、どんどん活躍の場を広げていくのだが、おかしいのではないか、と思うような事実を目の当たりにし、ごまかし続けるうちに身体にも支障をきたし始める。良心に従った結果、アメリカに住む人々の側に立つことを決意して、大げさではなく文字通り「命がけ」の告発に至ったのだった。

最初は「政府」や「権力」「覇権」とほぼ同義の「国」だったけど、暗部にあるさまざまなことを知っていき、自分の心の声をよく聞きながら生きているうちに、「国」がこの國に生きる人々や暮らしに変化していったのだと思う。彼のストーリーを観ていて、本当の愛國心というのは、この國に生きる万物を大切にし、その幸せを願うことだと改めて思った。その気持ちは国境を越えて、地球全体に生きる万物を想うことにつながっていくのではないだろうか。

すっかり彼のファンになり、鑑賞後にいろいろ調べていたら(どこらへんまでがフィクションなのかが気になったのもある)、スノーデン氏が語ったこんな言葉を見つけた。
"I would rather be without a state than without a voice."
(声なき人間になるくらいなら、国のない人間になるほうがいい)
ブラジルの国民に向けた公開書簡の一節で、自分にはとてもできそうにないことだけど、かっこいい名言だと思った。

映画に登場するジャーナリストのグレン・グリーンウォルドさんが書いたこの本も、近々読みたいと思っている。
暴露:スノーデンが私に託したファイル

以下の記事は、映画を観る前に読んでおくと内容がより理解しやすくなるのではないかと思いました。ご参考までに。
【映画.com】
オリバー・ストーン監督、最新作は「スノーデンが語ったすべてを映画化した」
(2年をかけて9回にわたって話を聞き、映画にしたそう)
【IWJ】
米国の同盟国をやめた瞬間に、CIAのマルウェアが日本中のインフラを崩壊させる!? スノーデン証言の真偽は⁉︎ーー映画『スノーデン』のオリバー・ストーン監督に岩上安身が直撃質問! 2017.1.18
【現代ビジネス】
スノーデンの警告「僕は日本のみなさんを本気で心配しています」
なぜ私たちは米国の「監視」を許すのか(2016.8.22 小笠原みどり氏)