20180515

朝鮮半島の南北首脳会談の実現について

先月のこと、北朝鮮と韓国の首脳会談が実現し、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が朝鮮半島の非核化と軍縮、核実験の中止を明言したというニュースが飛び込んできた。BBCの報道で確認すると、金正恩委員長と韓国の文在寅大統領が再会した兄弟のように笑顔でハグしている写真が載っていてものすごく驚いた(特に金委員長の笑顔に)。

平和に向けた大きな前進に感じられた。この一歩を着実な歩みにつなげて、平和を構築できるかどうかは、世界中の市民一人一人の意識にかかっていると思う。

昨年3月、朴槿恵前大統領がスキャンダルで罷免され、韓国では大統領選挙が実施されることになった。北朝鮮による頻繁な核実験が大きく報じられ、朝鮮半島での緊迫が高まるなかでの選挙。陸続きのすぐ隣りの国に核兵器があるという状況で、強硬派が選出されてしまうのではないかと思ったが、韓国の有権者は対話を通じた平和的解決を支持していた人権派弁護士の文在寅氏を大統領に選んだ。韓国の人は短絡的に武力によって解決するのではなく、対話と外交努力によって武器を降ろさせることを選んだということに、韓国の人たちはエライなぁと感動していた。(かたや日本では有権者の無関心も相まって、北朝鮮の脅威を煽って支持率を維持する勢力が政権を握りつづけている。)

文在寅大統領は、南北朝鮮首脳会談を実現させたのでノーベル平和賞をもらうべきだと、故・金大中元大統領(南北首脳会談を初めて実現させ、ノーベル平和賞を受賞)の妻に言われた際に、「ノーベル平和賞はアメリカのトランプ大統領がもらえばいい。私たち(韓国)に必要なのは(賞ではなく)平和だ」と発言したという(参照:CNN)。ノーベル平和賞をもらったところで、平和を実現させられなければ意味がない。北朝鮮との戦争は、結局はアメリカとロシアによる冷戦時代の代理戦争。根本的な原因はアメリカにある。こうしたことを含意しているのではないだろうか。米朝首脳会談のほうがさらに困難だ。アメリカのトランプ大統領に本気で平和構築に取り組んでもらいたいという希望も込められているのかもしれない。

この急展開に驚くことには驚いたのだが、『日本人のための平和論』(ヨハン・ガルトゥング=著/御立英史=訳)で読んだことを思い出すと、それほど驚くことでもないのかもしれないと思った。

『日本人のための平和論』(ヨハン・ガルトゥング=著/御立英史=訳)

北朝鮮の外務省官僚に直接聞いた内容が書かれている部分があるのだが、日本や欧米のメディアが伝えている北朝鮮のイメージ(何かに洗脳されていて何を言っても通じない危険な人たちというイメージがあるような気がする)とは異なり、想像以上に冷静でまともで、理解できる話だった。

ガルトゥングさんは北朝鮮が核を持つ理由を5つ考察して挙げているが、その中に「核なき朝鮮半島を望んでいるから」というものがあった。一瞬「自分が持っておきながら意味がわからない…」と思ったが、続けて、北朝鮮は韓国に送り込んだ多数のスパイを通じて、アメリカが韓国に核兵器を配備しているということを知っていて、場所も特定しており(アメリカと韓国は否認)、朝鮮半島の非核化の交渉材料として、核兵器を保有しているのだと考察されていた。ロシアや中国が北朝鮮の核開発に協力しているといったニュースを見かけるが、アメリカが韓国に核兵器を配備しているとすれば、そんな至近距離に核兵器を置かれている以上は、抑止力として北朝鮮に置いておきたいという考えも理解できる。

朝鮮半島の非核化について、一方的に北朝鮮が解決すべきことのように思えるような書き方がほとんどだが、完全に独立した第三者による査察などによって真実を明らかにしなければ(つまり、アメリカが韓国に核兵器を配備しているのかどうかを明らかにしなければ)、解決できる問題ではないように思う。本には非核化に向けた具体的な提案もあり、無理な話では全くない。この本で書かれていた提言は、今まさに必要とされていることのように思えて、もう一度読み返そうと思った。

アメリカのドナルド・トランプ大統領と、北朝鮮の金正恩委員長との首脳会談が、6月12日にシンガポールで開催されることが決まったそうだ(参照:BBC)。対話を通じた解決に向け、再び大きな一歩となるように心から願っている。

このニュース(参照:時事通信)の写真を見て、アメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金委員長が並んでオリンピックにいる(!)と驚いたのだが、どちらもそっくりさんだった。米朝首脳会談の実現を願って、ユーモアあふれるスタントをしたのかもしれない。平和を実現するために、いろいろな形で行動している人たちがいる。私も、この地球に生きる1人の人間として、自分にできることを、自分なりに考えて、ささやかでも行動に移し、よりよい世界を作っていくエネルギーの一部になれたらと思う。

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