20160817

日本で市民のための政治を取り戻す動きは始まったばかり。長い道のりになることを見据えたうえで行動を考えるべき。

何か発言をするときには、それがどのような結果をもたらしうるかを考えて、それでも言うべきかどうかをよく検討した上で言うように気をつけています。失敗していることもあるんだと思いますが…。

人のふり見て我がふり直せ、と言うことわざがありますが、SNSなどで他の人がしている主張や批判の出し方を見るのも勉強になります。しかも、SNSの場合は、それに対する他者からの反応まで見えてしまうので特にそうです。

このまえ、デモに行かないことをひたすら懺悔(ざんげ)するようなコメントを見かけて、「この人、いつも精一杯のことはやっているように見えるのに、なんでこんなに自分のこと悪人みたいに言ってるんだろう?」と思っていたら、その人とつながっている人が、「スマホで指先ばっか動かしてねえで(=いいねやシェアばかりしていないで)、たまには現場(=デモとか選挙の手伝いとか)に来いよオラ」みたいなことを書いていたらしい(実物は見ていない)。そういうの、たまに見かけます。

強制されたら逃げたくなるのが人間というものです。こんな言い方をされて、デモや座り込みなど、現場の活動に行ってみようと思う人は少ないのではないでしょうか?

もし仮に、これを書いた人が、デモや勉強会や集会などを主宰したり、こういったものへの参加を呼びかけたりすることがこの先あるとしたら、参加や協力を得られにくいのではないかと思います。行くのも相手の言いなりになったみたいで癪(しゃく)にさわる感じがするし、行かないのも気まずいし、私だったら少しずつ距離をとるようになるだろうと思います。

責務を果たしていないと責められたり、努力が足りないとなじられたりしたら、やれる範囲で精一杯やっている人もますます萎縮してしまいます。人それぞれ、いろいろな立場があるし、背負っているものも違う。経済状況も違えば、持っている能力も違う。自由に使える時間もまちまち。その中で、できる範囲で、やれることをやっているんだと思います。私だってなんでもかんでもできているわけではない。「努力が足りない」と責め立てても、努力が増えることは期待できないのではないでしょうか? 「もういいや」とやめてしまう人もいるでしょう。それよりも、できているところに感謝をしたほうがいいと思います。

活動を増やしてほしいと思うのなら、具体的にこういう行動もできますよ、と判断材料を提供したり、根本的な原因を解明して発信し、それに対する対処方法をそれぞれで考えてもらうような投稿のほうが効果的だと思います。あるいは、具体的に相手に何かしてほしいことがあるのであれば、自分がこういうことに課題を感じていて、こういうふうにしていきたいと思うんだけど、もしよかったらこういうところで助けてもらえないだろうか、と丁寧にお願いをする(引き受けてもらえなくても相手を恨まない)ほうがいいと思います。

漠然と、おめえらもやれよ、世の中最悪なのはおめえらがもっとちゃんとやらねえからだ、みたいなのでは、だれもやってくれません。

私が自分ももうちょっとがんばろうかな、と思えたり、この人の手伝いがしたいな、と思ったりするのは、本人が、自分一人でもやる、だれも応援してくれなくてもやる、この行動は自分のためであり他人のためであるという深い信念のもとに行動している様子を知るときです。

たとえば、宇都宮けんじさん(*)、バーニー・サンダースさん、ノーム・チョムスキーさん、三宅洋平さん、山本太郎さん、奥田愛基さんをはじめとするSEALDsのメンバーのみなさん、広河隆一さん、鎌仲ひとみさん、三上智恵さん、想田和弘さん、おしどりマコ&ケンさん…など、たくさんいますが、私が尊敬する活動家のみなさんはみんなそうでした。

たった一人でもやる。上から目線にも下から目線にもならない。やらない人を決してなじらず、やれることをやっているだけという感じのスタンスで決して偉ぶらない。そういう態度で続けていれば、共感した人が後に続いたり、オリジナルの活動を生み出したりして、また広がっていくという好循環が生まれています。

敵をつくらないこと。敵も仲間にしてしまうこと。市民運動ではそれが大事だと思います。アメリカでもベトナム戦争から40年以上かかって、ようやくバーニー・サンダースさんのような立派な人が大統領になる可能性が生まれました。それでもまだ実現はしなかった。あと数十年かかるかもしれません。日本は今、ようやく市民のための政治を取り戻そうという動きが始まったばかり。長い道のりになると思います。ちょっとやそっとでは変わらない。長く続く運動にしていくために、だれかを責めるのではなく、自分がどうするか、に集中したほうがいい。コミュニケーションのスキルと、見識と、人間性を磨きながら、共感を広げ、自ら行動する人を増やす努力を一人ひとりがしていくことが大切だと思います。

*宇都宮けんじさんのこのインタビュー記事も、ものすごくその通りだと思いました。ぜひ読んでみてください。
「日本の市民運動はもっと利口になれ」宇都宮健児氏、都知事選を振り返る(The Huffington Post written by 吉野太一郎 on 20160805)