20140703

駆け出しダウンシフターのたわごと

東京時代も好きなことばかりしてゆったり働いていたが、香川に来てもっとゆったりになった。

収入が半分くらいになってなんとなく不安になり、バイトをしないとだめかなぁと求人を見たりもしたが、せっかく好きなことだけをしに移住したのに、環境や身体に悪いものを売る仕事や、欲しくない人に欲しがらせる仕事、戦争や環境破壊に加担している企業の手伝いをしてどうするんだろうと思った。生きていくのにいくらかかるのか、真剣に計算してみた。

月に必ず引かれる“奨学金”という名の学生ローン(*)の返済や、電気代、ネット代、携帯代などの経費を改めて計算し、月に使えるお金を出してみたら、節約をがんばれば暮らせることがわかった。東京で相方ともどもお世話になった人生の先輩が、カロリー計算をゲーム感覚で楽しみながら減量に成功したのを見習って、月当たり使えるお金を日割りして1日に使えるお金を出し、ちょっとしたゲーム感覚で毎日節約も楽しんでいる。

仕事はしてるの?と心配されるほどだが、細々ながら好きな翻訳と執筆の仕事をさせてもらえていて、うまくやりくりすれば、おいしいものがお腹いっぱい食べられて、学生ローンも返済でき、温泉にも行ける。

中学から老後の心配をする子もいる。私もそうだった。安定した仕事について、老後は厚生年金をもらって、いや、教師になれば恩給もついて安泰だ、みたいな、夢のない子どもだった。何がしたいのか、なんて考える余裕もないほど、将来の不安でいっぱいだった。学校の作文などで夢を書いたこともあったけど、「ハクをつけないと」「バカにされたくない」など、外からの評価を意識しすぎて、恐れを出発点にした"夢"だったように思う。

いざ、こんな生活に入ってみると、私ってなんてバカだったんだろうなぁと思うことがある。わずかな収入でも幸せに暮らせてしまう。おいしいものをお腹いっぱい食べたって、頭と手を使えば、電気は500円台、タダでお湯が沸き、自炊すれば有機・無農薬の本物の食材にこだわったって食費もわずかで済む。燃料も水も食料もみんな自然がただで用意してくれているんだ、なんてありがたいんだろうと思った。

いずれは電気も自給する予定で、秋には米も穫れ、畑で野菜も育つから、買うのは調味料くらいになるし、生活費は減る一方だ。食べていくためだけなら、本当に人に喜ばれること、意味があること、好きなことだけを収入にして生きていくことは確実に可能だと思えるようになった。

相方と二人、ムカデの恐怖に気が滅入り、家から逃げるように外で過ごしていた時期があった(煙で燻してみたり、いろいろ試して最近はあまり出なくなった)。幸い、香川はうどんが安くておいしいので、昼ご飯は300円以内で食べられ、明るい雰囲気も好きで、よく行った。しかし、同じお金でもっと健康的でおいしいものが食べられると気づき、完全に全食自炊にして一週間もしたら、肌のハリとキメ、潤いが全然違った。やっぱり食べたものが身体になっている。

こんなにいいものを食べていたら、全く医者にかかる気がしない。ますます老後の不安と現実はかけ離れていく。子どもの頃、老後の不安に恐々としていた自分に教えてあげたい。今、やっと夢を見るスタートラインに立てた気がする。今になってやっと、子どもみたいに、何をしようかな、と将来の夢を思い描けるようになった。

日々の生活の中で手を動かすことが増えて、食べるものや使うものを作るのも楽しくて、そういうのも仕事にしてみたい気持ちもある。一方で、やっぱり言葉が好きなんだなぁとも思う。何カ月か前に、日本の素晴らしいものを海外に伝える英訳の仕事をさせてもらってすごくやりがいを感じた。日本語と英語はかけ離れた言語であるだけに、ああでもないこうでもないと考えあぐねてふとぴったりの訳が浮かぶとすごくおもしろく、似たような表現を見つけると同じ人間なんだもんなぁとうれしくなる。英語と日本語を行ったり来たりする仕事は、そういうのが醍醐味だと感じている。本当に必要としている人の役に立てたり、世界を良くする一助になれたり、そういうことに自分の力が生かせたらこんなに幸せなことはないなと思う。

節約して自分ですることを増やしたら、やりたいことがたくさん見つかった。出て行くお金が少ないから、それらを全部少しずつ仕事にしたら暮らしていける。争う必要も、貪る必要もない。時間にもお金にもゆとりができ、仕事には幸福感と満足感を感じられる。本では読んでいたが、こんな生活が本当に可能だったということを、今知り始めたばかりだ。

(*注:海外では奨学金と言えば給付型のもののことで返済はなく、日本の“奨学金”のように返済の必要のあるものは「学生ローン」と正確な呼称で呼ばれる。経済的に恵まれない人が大学で勉強できないような“先進国”は日本くらいしかない。参照→NAVERまとめ「日本の奨学金制度はおかしいぞ」