20131112

飛行機

【旧暦10月10日 月齢 8.6 立冬 地始凍(ちはじめてこおる)】

今日訳したエッセイが飛行機を題材にしたものだったので、飛行機にこの前乗ったときに思ったことを書きたくなりました。

この間、旅行に行ったときに飛行機に乗りました。飛行機は苦手で、滅多に乗らないので、5年ぶりくらいだったと思います。慣れていないので、不思議に思うことがたくさんありました。

まず、時間のことを深く考えさせられました。飛行機が離陸してスピードを上げると、それまで速いと思っていた車や船がだんだんスローモーションのようになり、終いには止まって見えました。動いているものみんなが止まって見えました。動いているのがわかるのは、横を飛ぶ別の飛行機くらいでした。地上では波打って見えていた海も、飛行機で超スピードで移動していると凍っているように静止して見えました。瞬間移動とかワープってこういうことなのかもと、とても不思議な感覚でした。

自分が急いで超速で過ごしていると、ぎゅっと時間が圧縮されて、自然のリズム、人間らしいリズムを失うのかもしれないと思いました。高速で過ごしている都会の人々の中には、自分と違うペースで暮らしている地方や他国の人々のことを遅れていると蔑んだりする人もいますが、それぞれの時間の流れが違うというだけで、優劣をつけるのはおかしなことだと気がつきました。空から高速で見ると、海が波打っていることも、船が動いていることもわかりません。急いでいる人が見落としている大切なことを、ゆったりとした時間の流れで生きている人はたくさん見て感じているのだと思いました。

それから、生活する空間のことも考えさせられました。だんだんと空高く上がっていくと、地上が広く見渡せました。狭い空間に高い建物がひしめき合うように立ち並び、ぎゅうぎゅう詰めで暮らしているのは東京近辺だけの限られた狭い場所だけでした。少し離れればすぐに、畑と田んぼ、山、森、川原、原っぱ、その中に家が程よく散らばっているところが見えて、そういう地域がほとんどでした。狭い部屋に高いお金を払って住み、混み合う場所を移動して、街に出ても人とぶつかるような生活は、東京という限られた狭い場所だけでの常識なんだと思いました。それが当たり前だと思い込んでいるだけなんだと思いました。

東京に暮らし、高いビルに囲まれて生活していると、遠くに山が見えません。でも空を飛んでみると、たしかに山に囲まれていました。東京のようなこんなクレイジーな場所でも、文字通り、山に抱かれているんだなぁと実感しました。ビルしか見えない東京では、自然のことを忘れがちで、なんでも人間が作っている、なんでも人間の思い通りになると錯覚しがちなのかもしれないけれど、飛行機から見ると、確かに山に抱かれていて、山で育まれた水や栄養など山の恵みに生かされていて、雨雲を山がせきとめたりしているのを見ると、山に守られているんだなぁ、と改めて思いました。

そして、自分が楽をしようと思ったら、それはだれかの犠牲なしには成り立たないということも感じました。飛行機は便利さが高い分、まざまざと感じさせられました。私が乗った便は機械の不具合が発見されて、それを調整するために20分ほど出発が遅れました。若い男性の技師さん2人が搭乗ロビーに何度かやってきて、真剣な顔で状況を係の人に伝えていました。汚くて臭い化学物質をたくさん吸い込まなければならないような作業を、時間と闘いながらしてくれているのだと思いました。係の人も焦り気味で、状況を伝えに来る技師さんを厳しい目で見ています。お客さんたちもカリカリ、イライラした様子です。私たちの安全のためにがんばってくれているのに申し訳ない気持ちになりました。出発するとき、自分たちの安全な移動のために一生懸命やってくれていた技師さんたちは、睨みつけられても、出発した私たちを手を振って見送ってくれました。会社の決まりで義務でやっているのかもしれないけれど、気持ちがこもっている感じがしました。陰の努力でフライトを支えてくれているすごい人たちだと思いました。

技師さんたちの他にも、石油を掘る仕事をしている人、鉄鋼を作る仕事、自分にはできないような危険で過酷な仕事をしてくれている無数の人々の犠牲の上に、飛行機での移動は成り立っていると思いました。お金を払っているほうが偉い、客は神様だみたいな、考え方はやめたほうがいいと思いました。お金をもらっているんだから、それが仕事なんだから当然だという考え方もあるでしょうけれども、私にはその犠牲が申し訳なくて、覚悟して乗らないといけないな、乗らせてもらってありがたいなと思いました。便利さとはだれかの犠牲のもとあるということを認識しました。石油ではなく水で飛ぶとか、クリーンで安全な技術の開発が進んで、できればみんながやりたくない仕事をやらなくても済むような世の中になるといいなぁと思いました。